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一方のODSは、成層圏オゾンを破壊して地表に達する紫外線量を増し、人類を含む地上生物の生存を危うくする危険物質であり、1987年のモントリオール議定書及び1990年の改正を受けてAC&R用に使用されていたCFCの生産は1995年末をもって禁止された。

CFCは、ODSであるとともにGWガスである。CFCは炭素、フッ素及び塩素の化合物であるが、水に溶けることはなく少しずつ拡散して成層圏に達し、そこで分解して塩素の酸化物ができ、これがオゾンと反応してオゾンをもとの酸素に戻す作用を持っている。

 

CFC−12は乗用車、トラック、その他車輌用エアコンに広く使われてきており、CFC−12の全使用量に対する車輌用の使用割合は37%に達していた。EPAは現在9種類のCFC代替品を認めているが、車輌用エアコンにCFC−12代替として使用されているものはほとんどHFC−134aである。エネルギー省の推定によれば、1997年米国のあらゆるソースから排出されたCFC−12は24,000トン、HFC−134aは18,000トンである。1990年から1996年の間にCFC−12の全排出量は68%減り、HFC−134aは13%上昇している。

 

舶用AC&Rで、CFCを使った装置と同じ機能、重量スペース等の性能が得られる代替物質を見出すことはかなり困難である。特に艦艇の場合、武器やエレクトロニクスに対する特殊冷却装置が必要なので尚更である。また、艦艇の場合、従来のAC&Rシステムの小変更で使用できる代替物質を使用しない限り、既存の全艦艇を改装することはコスト的に不可能であるという制約もある。

海軍でAC&R用に使用されてきたのは、CFC−12及びCFC−114である。海軍はEPAと協力して、EPAが認可している9種類の代替物質の全てについてオゾン破壊機能、毒性、可燃性、寿命その他の物理、化学性能を比較検討の結果、CFC−12の代替としてHFC−134aを選んだ。これにより、コンプレッサーの速度変更、あるいは新しいコンプレッサーへの代替、潤滑油や脱水機の新替、冷媒漏れ検知器や熱膨張バルブのシールの新設その他が必要となった。

 

1999年9月、現在147隻の艦艇のCFC−12 AC&RがHFC−134aに代わっている。従来、CFC−114を用いていたエアコン装置はHFC−236faで代替され、コンプレッサーその他が改造されている。冷媒を代替したAC&Rは全て効率が良く静かで、海水温度が高いペルシャ湾のような所でも運転状態は良好である。また、信頼性を高めるためマイクロプロセッサーベースのコントローラーを付加しているので、運転は簡単でトラブルは少なく運転要員数は減っている。現在、海軍ではHFC−134aを使った次世代AC&Rを開発中である。

HFC−134aはODSではないがGWガスであることは京都議定書で示されたとおりであり、将来は禁止される運命にある。このため、海軍ではGWガスを使わない、つまり蒸気圧縮技術(ランキンサイクル)を使わないAC&Rを開発中である。

 

 

 

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