6-4 地球温暖化ガスとオゾン層破壊物質
地球温暖化(Global Warming: GW)と成層圏オゾン層破壊は、人類にとり非常にリスクの大きい環境問題でありそれ等が検討されて久しいが、船舶も化石燃料を燃やして航行する内燃機関(ガソリン及びディーゼルエンジン)が主流であり、GWガスとして最も問題視されているCO2を排出し、また、エアコン装置や冷凍装置(Air Conditioning and Refrigeration: AC&R)、消火装置にCFCやハロン等のオゾン層破壊物質(Ozon Depleting Substance: ODS)を多量に使ってきた経緯からGWガス及びODSに対する対策は重要である。GWガスとODSのメカニズムは異なるが、GWガスの一部はODSでもあるので、両者の相関を正確に把握する必要がある。
地球温暖化とその影響は、1988年国連が設置した気候変動に関する政府間パネルで国際的な検討が行われ、1992年5月GWガスの大気中濃度の安定化を目標とした国連気候枠組条約が採択された。この条約には、各先進国がGWガスの排出量、吸収量のリストを作る等種々の約束が盛り込まれていいたが、これ等の約束は条約の目的を達成するためには不充分であることから、1997年の京都会議までに先進国の対策を強化する国際的作業を続行することが決定され、1997年12月条約の締結国155か国が京都に集まって京都議定書が採択された。
京都議定書では、GWガスをCO2、メタン、亜酸化窒素、HFC(Hydrofluoro Carbon)、PFC(Perfluoro Carbon)、6フッ化硫黄の6種類とし、先進国は2008年から2012年の5年間に6種類のGWガスの人為的な総排出量を基準年(1990)の排出量の5倍(5年分)の量に比べ全体で少なくとも5%減らすことを規定している。
米国は京都議定書に調印したが、クリントン政権は開発途上国の実質的協力が約束されるまで批准のために議定書を上院に送らないこととした。米国政府及び議会には、京都議定書に対する反対論が根強いが、理由は下記2点に要約される。
*米国の自然資源の利用方向を現時点で議定書に沿って変えることは経済の成長率を下げ、他国特に開発途上国に比べ米国の競争力を低下させる。
*気候変動が大問題であることがはっきり示されていない。
一般には、CO2を主とするGWガスの削減対策は省資源と省エネルギーの機器開発を促すものと受け取られているが、現時点で人類のエネルギー源から化石燃料を取り上げることは不可能であり、化石燃料の効率を上げてGWガスの排出を減らすのが最も現実的な環境対策といえる。その意味で、現在米国政府諸機関がEPA環境技術開発イニシアティブの一つとして共同開発中の燃料電池推進船は、ディーゼル燃料を従来のごとく燃焼せずに化学反応によって水素を取り出しエネルギー源として使用するものであり、エネルギー変換効率が25〜50%上昇するといわれているので希望の持てる装置である。