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TBT塗料の外国種侵入防止に対する効果及びVOCの増大については、USCGが別途調査し、いずれもあまり大きな問題ではないと結論している。さらに、TBTを禁止した場合のコスト上昇も、日本の研究によれば0.6%増であるのでTBT擁護派の主張は必ずしも正しくない。

 

米国ではっきりいえることは、TBTに代わる新しい塗料がEPAの承認を得るためには、11〜15百万ドルの莫大な費用と研究から市場に出るまで長時間を要することである。

1995年にRohm and HaasのTBTに代わるSea−Nine 211はEPAの承認を所得したが、1996年EPAが殺虫剤基準を変更した時点で、再承認のための試験を繰り返さなければならなかった。米国では、ヘンペル、Jotun等複数の会社がSea−Nine 211を防汚塗料の中に入れ、自社の防汚塗料新製品として売り出している。

 

米国の海域では、連邦法及び州法による規制で、TBTはかつて予測された危険レベルよりずっと下回った値となっている。1997年、海軍は議会に対する報告書の中で、海軍基地の海水中から採取した水サンプルの20%以上が暫定基準以上のTBTを含んでいたが、生態学的に重要な地域では5%が暫定基準以上であるにすぎないと述べている。このレベルでは、95%の生物種はTBT汚染から保護されている。また、この程度のTBT汚染では、その地域の魚類を食べた人々に何等の健康上の害を与えない。基準を上回っているのは港、マリーナ、造船所である。

環境問題に熱心な国々がTBTを規制しても、マーケットの原理は労働力が安くTBT等に無関心な国々にTBT塗装の仕事が流れる傾向にあるので、TBTの禁止は世界的に実施することが重要である。

 

TBTを世界的に禁止するために、更につめなければならない事項は下記のとおりである。

*TBTを使用することによる船主の利益

*船の防汚塗料の効く期間のリアルタイムの分析

*最適ドライドック期間の設定(3あるいは5年?)

*マリーナ、港湾においてTBTが環境に与える影響の長期コスト

*多くの国でTBTに代わる製品がないことに対する対策

*TBT規制がない国でのマーケット原理

*世界的な規制が実現した場合に港や水路の汚染土壌の浚渫、土砂の廃棄にかかるコスト

*TBTを使うことによる環境上の利点(侵入種の減少、船舶の燃料消費量の減少、エンジン排出ガスの減少、塗装時のVOC減少等)、汚れた外板に付着して持ち込まれたANSは200万種ともいわれ、バラスト水によって持ち込まれる量に比し優るとも劣らない数である。この問題はTBT規制と関連し大きな問題となっている。

TBTに代わる製品は存在するものの、世界中での使用を認可されたものは未だなく、IMOの規制が発効する前に有効な代替製品が開発される必要がある。有効な代替製品が見つからず再び昔の銅を含んだ製品に戻る場合の損失は、5億ドルから10億ドルと試算されている。

 

 

 

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