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6. その他の環境項目

 

6-1 エンジンからの排ガス

 

舶用エンジンからの排ガスに対する米国の対応は、油濁やバラスト水あるいは次節で述べるTBTに比して、IIMOに対して受け身であった。1997年9月公布されたMARPOL 73/78附属書VIは船舶からの大気汚染の防止を規定したものであるが、燃料中の硫黄分、SOx排出規制区域、成層圏オゾンを破壊するハロン及びCFCを使用した機器の搭載期限、ディーゼルエンジンからのNOx排出基準、汚染された包装材料やPCB等の船上燃焼の禁止等を定めている。

このうち、新しい舶用機械を必要とする項目は、ハロン及びCFCの代替品を使った機器及びNOx排出基準をクリヤーする新技術を適用したディーゼルエンジンである。ハロン及びCFCについては、第6-4節で詳述する、NOx排出基準は、エンジンの回転数が130rpm以下の場合17g/kw・hr、2,000rpm以上の場合9.84g/kw・hr、その中間の130から2,000rpmでは45・nexp(-0.2)g/kw・hrと規定されている(ここにn:回転数、exp: exponential)。

附属書VIは未発効であるが、国際海事社会では発効に備えて新造ディーゼルエンジンは全て附属書VIの基準を満たすものが製造されている。

 

米国はNEPA成立の翌年にはCAAを成立させ、環境と人間の健康を守るための大気基準を設定し、基準を達成し得ない地域に対してEPAの特別指導が実施されてきた。この結果、大気の清浄度の改善が著しく進んだが、それらは主として自動車や工場の排ガス規制に基づく結果であり、舶用エンジンからの排ガスは一部を除いて規制の対象としては重要視されなかった。

大気基準の達成上、舶用エンジンからの排ガスが問題とされたのは、南カリフォルニア沿岸地域やアラスカ氷河地域でのディーゼルエンジンからのNOx排出、レクリエーション用ボートガソリンエンジンからのHC排出であり、EPAも舶用エンジンからのNOx、HCに対する排出規制を立法化している。

1999年12月、EPAは出力30kw以上シリンダー当たりの排気量30リットル以下の商業用舶用ディーゼルエンジンに対し、2004〜07モデル年の間にエンジンシリンダー当たりの排気量によりNOx+HCの排出量を7.5〜11.0g/kw・hrに抑える設計をメーカーに要求している。NOx+HCを規制値として選択したのは、NOx単独の規制値とした場合のコスト上昇を抑えるためである。いずれにせよ、出力30kw以下の小型ディーゼルエンジン及びシリンダー排気量30リットル以上の外航大型船に対するEPAの排ガス規制は、将来事項として保留されている。

 

米国の舶用ディーゼルエンジンの大部分は、陸上トラック用あるいは産業機械用高速エンジンメーカーの転用製品である。舶用エンジンは陸上エンジンに比して使用条件がはるかに過酷であり、悪い環境条件の下長時間高負荷運転に曝されるので、陸上エンジンに採用されてきた排ガス技術を舶用に合うように修正する必要がある。

 

 

 

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