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環境上の安全のためにバラスト水の下の部分のみを排出しようとすると、燃料タンクが小さくなったと同じ効果となり問題が大きい。

海軍は、給油時の見張り要員を多くして環境上のリスクを減らしたり、燃料補給時間を長くして燃料と水の撹乱を少なくする等の簡単な対策に加えて、タンク内の何処にどのような原因で燃料とバラスト水の混合が発生し15ppm以上の排水につながるのかのシミュレーションスタディーを実施するとともに、混合を発生し難くする簡単なハードを開発中である。

 

さらに、海軍はESS−21の中で、UNDSの完成を重要視している。海軍が液体廃棄物処理システムの開発を始めた当時は、各州がバラバラの排出基準で規制していたが、1990年代初期海軍は液体廃棄物に関する連邦統一基準がなければ艦艇の自由行動が保証されないとの考えに達し、EPA、USCG、NOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration)その他の連邦政府機関と連絡をとりながら、艦艇に関するUNDSの作成に取りかかった。

海軍は、CWAの改正を提案し議会の支持を取り付けた結果、CWA312が改正されDODとEPAが協力してUNDSを作ることが承認され、1996年2月10日クリントン大統領が署名して発効した。この結果、1996年国防承認法にDODに対する本件の予算措置が盛り込まれた。

 

これらの法規は、UNDSの作成を3つのフェーズに分けて進めるよう指示している。第1フェーズは、海洋汚染防止機器あるいは方策(Marine Pollution Control Device: MPCD)で規制すべき液体廃棄物の種類を決定するフェーズである。MPCDは機器のハードあるいは艦上保管、管理等の方策を示したものであるが、第1フェーズで25種の液体廃棄物が選定された。25種の中には、ビルジ油水、グレー水、CFBS油水の3種も含まれており、これ等3種はこれまで述べてきたごとく海軍も国内外の諸基準に従うことを建前としているので、実際にDODとEPAが進めているのは残り22種に対する基準作りである。

 

22種の内訳は、以下のとおりである。

水様膜形成泡、カタパルト水ブレーキタンク及び発射後引込み廃液、チェインロッカー廃液、クリーンバラスト、可変ピッチプロペラ油圧液、甲板洗浄水、ダーティバラスト、蒸留及びリバースオスモシスブライン、エレベーターピット廃液、消火メインシステム、ガスタービンの洗浄水、船体塗装浸出液、モーターガソリン補償廃液、非油性機械廃液、写真ラボラトリー廃液、冷却海水、海水管バイオ防汚水、小型ボートエンジン廃液、ソナードーム廃液、潜水艦ビルジ油水、水面下船体保守、ウエル甲板排水

 

フェーズ2は、各種液体廃棄物に対してどのようなMPCDが必要かを決定するフェーズであり、現在作業中である。最終段階のフェーズ3は、フェーズ2で決定されたMPCDの設計、製造、設置、使用等に関する具体的法規を作成する段階で、いずれのフェーズでもNAVSEAが作業の中心となっている。

 

 

 

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