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バラスト水のANSの問題は、国際的にIMOの場でも取り上げられ、米国も世界1のポートステート国として世界的規制に重大な関心を持っている。1997年11月27日、IMOの海洋環境委員会は“有害な水中生物及び病原菌の移動を最小にするためのバラスト水のコントロールと管理のためのガイドライン”を出している。バラスト水のコントロールと管理はいずれMARPOL 73/78の附属書に加えられ、国際的強制法規となる予定である。

 

米国においては、1990年非原生水中有害種防止及び管理法(Nonindigenous Aquatic Nuisances Prevention and Control Act of 1990: NANPCA)が成立し、USCGに5大湖及びセントローレンス運河にANSが入り込まないための具体的規則を作成する権限を与えた。これにより、1993年5月10日以降、カナダ及び米国のEEZ以外から5大湖及びセントローレンス運河に入る船舶はEEZ以遠でバラスト交換してから入ることが義務づけられた。さらに、1996年10月26日、連邦議会は国家侵入種法(National Invasive Species Act of 1996: NISA)を可決した。NISAは、NANPCAを補足する法案であり、USCGに全ての米国海域における侵入種防止のための具体的規則を作る権限を与えている。

1999年2月3日、クリントン大統領はEO13112“Invasive Species”を公布し、7つの政府機関が協力して侵入種委員会(Invasive Species Council)を作ることを求めている。本委員会の作業の主要な部分は、船舶のバラスト水の問題に対する報告書作成である。

 

NISAに基づき、USCGは米国海域に入った全ての船舶に適用されるバラスト水管理指針と報告義務を盛り込んだ規則公布の前段として、1999年5月17日NPRMを出し一般よりのコメントを求めた(64FR26672)。本規則は最終的に1999年7月1日に発効している。

本規則は未だガイドラインであるが、2002年には強制法規となる予定である。強制法規化に備えて、USCGでは精度の高いバラスト水の塩分測定器の開発を進めている。本規則により、USCG検査官は適宜乗船してバラスト水の塩分濃度を測定することになる。今のところ30ppt以上であればバラスト水が米国のEEZ以遠で交換されたと判断しているが、その測定精度が問題となっている。現在USCGで研究中のバラスト交換を確かめる機器のなかで、質の高い結果を示し取扱いも簡単なものは蛍光分光器による方法である。

 

バラスト交換は今のところ唯一の現実的方法であるが、荒天下で船舶の復原性が保たれない場合や船令、バラストタンクの形状から全ての船舶が洋上でバラスト交換を実施できるとは限らない。したがって、USCGではバラスト交換時の船舶の安全確保及びバラスト交換に代わる技術の開発が当面の問題となっている。いずれにせよ、USCGはバラスト交換は一時的な対策と考えており、これに代わる種々の技術開発を行っている。

 

 

 

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