現在、全ての技術が開発の初期段階であるが、中には開発段階の機器を既に搭載している船もある。
現在USCGが検討対象としている技術は以下である。
*熱技術(Thermal Technique)―水温を数分間45度あるいは12〜18時間35度まで上げ、冷水種を死滅させる。熱源はエンジンの廃熱を利用する。
*フィルターシステム(Filtration System)―1997年五大湖船に搭載され試験された。50ミクロン以上のものは通さないが、それより小さい菌やバクテリアが通過するのが問題となっている。
*紫外線処理(Ultraviolet Treatment)―波長200〜300nmの紫外線を照射することによりバクテリアやウイルスを死滅させる。大きな生物には効かない。通常上述のフィルターシステムと併用される。前節で紹介したHydromemは、サイクロン分離機で大きな生物を除去した後紫外線処理するものである。第5-7図にクルーズ船に搭載されたOptimar UVバラスト処理システムを示す。
*磁場(Magnetic Field)―磁場を通すとある種の生物が死滅することが知られている。
*電気パルス及びパルスプラズマ技術(Electric Pulse and Pulse Plasma Technique)―高エネルギー(10〜25KV)の電気パルスを短時間(1マイクロセカンド)2電極間で発生させるか水中アーク(Pulse Plasma)を与えると、バラスト中のある種の生物を死滅させることが知られている。
*防汚塗料(Anti−Fouling Coating)―防汚塗料に接触した生物を死滅させる。ただし、大部分の生物はバラスト水中に浮遊しているので効果は少ない。
*音響システム(Acoustic System)―15〜100KHzの音波を出す音響システムで微生物を死滅させる。大きな生物には効かない。
*廃水処理システム(Waste Water Treatment)―都市の廃水処理システムと同じシステムをバラスト水処理に用いることは塩分の関係から現在は不可能であるが、研究対象となっている。
*化学薬品処理(Chemical Biocides)―バラスト水を化学薬品処理する方法は非常に有望であるが、同時に別の環境問題の火種ともなる。
酸化剤をバラスト水中に投入する方法は有効である。通常オゾン処理と塩素処理が用いられるが、海水中での強力な酸化剤処理は危険物質を生成する。また、オゾンはバラストタンクの腐食を早めるため、オゾンを海水中で使うことは難しい。