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プラズマアークの発生法、トーチの詳細設計等については多くの論文が発表され実績も多いが、一般にトーチ部では30,000度にも達するが、ちょっと離れると5,000〜10,000度に下がる。しかし、それでも通常の焼却炉よりはずっと高い温度である。

プラズマを固形廃棄物処理に使う利点は、下記のように幾つか存在する。

*プラズマアークを形成するガスを使用者が自由に選べる。艦艇の場合はガス補給の困難が予想されるので、空気が選ばれている。

*3,000度以上では全ての酸素分子の原子核と電子が分離して電離気体となり、化学的破壊力が強く短時間で廃棄物を破壊できる。

*廃棄物分子の熱分解が温度とともに加速度的に増大する。

*プラズマアークの温度が、全ての有機固形廃棄物のガス化温度及び金属などの無機固形廃棄物の溶融点以上である。

*プラズマアークのエネルギー密度が炭素ベースの廃棄物も電離気体とすることができるので、排ガスがクリーンである。

 

以下に、PAWDSプロジェクトの陸上デモンストレーションプラントの概要、廃棄物の流れ、海軍が特にこのプロジェクトのために開発したプラズマエダクターの概要及びテスト結果について述べる。PAWDSの設計に当たり、艦上で出される固形廃棄物は第4-2表に示す2つのカテゴリーに分類された。カテゴリーIは重量で全体の75%を占め小片にしてプラズマエダクターで処理しやすいものであり、カテゴリーIIは残り25%のプラズマエダクターでの処理が困難と現状で判断されている廃棄物である。PAWDSプログラムの一つの目標は、カテゴリーIを何処まで増やせるかを見極めることであるが、どうしてもカテゴリーIIに残るものに対しては補助プラズマシステムを用いることにしている。

 

第4-6図にプラズマエダクターの概形を示す。プラズマエダクターは、軽量、コンパクト、頑丈、耐久性を要求される艦載プラズマ機器の決定版として考え出されたものである。

小片に砕かれた廃棄物は、同軸上に一直線上に配置されたトーチの周りに対称の位置から挿入される。廃棄物を運んできたキャリヤーガス量とトーチガス量の組み合わせを変えて、破壊性能を調節する。カテゴリーIの全ての廃棄物は、エダクター効果でトーチ部に吸い込まれた瞬間にCO、H2、Hその他の気体にガス化することが確かめられている。この場合、酸素を充分に送り込んでやればこれらのガスの完全燃焼率が増すが、入ってくる廃棄物の種類も常時変わっているので、通常これらのガスは不完全燃焼のままエダクター内側の超合金製ライナーに沿って流れる。このライナーは空冷で、ガスで高温となった冷却空気は不完全燃焼の上記ガスと混合され、その酸素により不完全燃焼ガスを完全燃焼する(2次燃焼)。エダクターは二重殻になっており、外側のジャケットは水冷である。

 

 

 

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