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4-3 プラズマアーク廃棄物破壊システム

 

本節では、今後船舶の固形廃棄物処理で重要な位置を占めると思われる、海軍が開発中のプラズマアーク廃棄物破壊システム(Plasma Arc Waste Destruction System: PAWDS)について述べる。海軍は99年度に、艦艇の固形廃棄物を艦上で処理するPAWDSの実用化を目指して3年計画のDOD先端技術デモンストレーションプログラムの一つとして、PAWDSプログラムを発足させた。

PAWDSは、基本的に電弧放電によって生じたプラズマ状態の超高温ガスで固形廃棄物を破壊するもので、平均温度は10,000−30,000度に達する。通常の焼却炉の温度はせいぜい900-1,200度であるので、その破壊力はすさまじく燃焼可能の廃棄物は急速にガス化され、燃焼しない廃棄物は溶融状態となる。PAWDSの一つの利点は、処理温度が高いためガス化に際して分子レベルの分解を伴うので排ガスがクリーンなことである。プラズマアーク技術は、貴金属の精練、肥料やアセチレン製造の分野で100年以上用いられてきており、陸上廃棄物処理へのパテントも多く出ているが、舶用として用いられた実績はなく今回のPAWDSプロジェクトでは幾つかの技術的障害を克服しなければならなかった。

 

通常大きな艦では、1日5トン以上の固形廃棄物を産出する。これ等の圧縮前の密度は5-15ポンド/立法フィートであるので、5トンの固形廃棄物というとその容積は2〜3,000立法フィートに達する。第4-1節で述べたごとく、現在艦艇は議会から固形廃棄物に関する特別措置を認められそれに基づく機器により処理しているが、議会は同時にその特別措置が一時的なものであり優れた環境機器を開発して世界海事産業でリーダーシップを発揮することを求めている。

第4-1節で述べた特別措置に基づく固形廃棄物処理の問題点は、廃棄物処理の全体コスト及び人件費が高く(CVN 68で18人専属)、世界の辺地で陸上処理する港が見つからない場合が多々あること、米国の特別措置を認めない国が増えていること等であり、米海軍は次世代の固形廃棄物処理装置を一日も早く開発して艦艇が世界中何処でも長期間戦闘能力を落とすことなく活動できる体制を作る必要に迫まられている。

 

海軍では、次世代の固形廃棄物処理装置として幾つかのシステムを検討したが、熱破壊システム、就中超高温プラズマアークによるシステムが最適であるとの結論に達し1996年議会に報告した(Navy Report to Congress、1996)。

PAWDSプロジェクトの目的は、舶用PAWDSに必要な技術及び設計要因を把握するために陸上にフルスケールのPAWDSを設置して、諸試験を実施することにある。艦載のPAWDSは陸上のそれと比較して極端に重量とスペースの制約を受け、さらに、極端に少ない数の乗組員で運転及びメンテナンスできるものでなければならない。また、艦艇特有の制約として、発生する高温、高熱が敵の識別装置に捉えられて攻撃目標とならないよう、システムの急速スタート、急速シャットが要求される。一般の艦艇用機器に要求される耐衝撃性能が要求されることは、もちろんである。

 

 

 

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