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この結果、多くの乗組員が焼却炉を最も好ましいと考えていることが分かったが、その理由は固形廃棄物の分別が不要なこと及び灰の処分が簡単なことであった。次にUSCGが行ったのは、焼却炉、圧縮機、シュレッダー、パルパーの船上環境評価である。焼却炉の環境評価で一番問題視されたのは排ガスの問題であるが、主機や発電機エンジンからの排ガスと比較検討した結果、焼却炉の排ガスが陸地に到達して人間の健康に与える影響は非常に小さいことが判明し、また、他の環境評価項目でも焼却炉の使用によって起る問題は非常に小さいと判定された。

 

焼却炉の採用が決まってから、実船搭載試験焼却炉につき米国及び海外のメーカーの製品が徹底的に調査された。また、海外からこの話を聞きつけて自分から売り込んでくるメーカーも多かったが、最終的にTeam Tec社のGolar焼却炉が選定された。その理由は、コンパクトでMARPOL船上焼却炉の仕様を完全に満たしているからである。実際にUSCGカッターに搭載試験されたのは、399フィートWAGBが全自動式のGS 500タイプ、378フィートWHECが連続投入式のOGS 400タイプ、230フィートWMECがバッチ式のOG 400タイプである。

 

実船燃焼試験ではO2、CO、NO2、NOx、SOxの排気量や煙道、近隣の壁の温度等が測定され、いずれも規制値以下であることが確認された。また、Golar GS 500ではダイオキシン等の有毒ガス、重金属、塩化水素等も測定されたが、いずれも規制値以下であった。

焼却炉採用の決め手となった前述の乗組員に対する聞き取り調査結果についても、下記の諸項目について定量的に再評価された。

*プラスチック廃棄物と他の固形廃棄物の分別不要によるコスト利得

*廃油、スラッジその他油性廃棄物も同時に焼却できるコスト利得

*海軍が採用しているPWP、シュレッダー、パルパーに比し、設置面積が少なくてすむことによるコスト利得

*同じくPWP、シュレッダー、パルパーに比し、電力が少なくてすむコスト利得

*灰の洋上廃棄が簡単なことによるコスト利得

*廃油陸上処理の費用が節約可能なことによるコスト利得

 

Team Tec社のGolar焼却炉は、IMO基準に合格した最新の焼却炉でコンパクトであり高温運転ではあるが危険ガスを出さない温度での安全運転を狙っており、スラッジ、プラスチック、紙、カードボード、木材、布、油ラグ、食物屑、病院廃棄物等の焼却が可能である。Golar焼却炉には、180,000Kcal/時から730,000Kcal/時までの能力を持つ5つのモデルがある。OGモデルはバッチ投入、OGSとGSは連続投入である。油を燃焼しようとする場合は、スラッジ混合加熱タンク、循環ポンプ、レベルスイッチ、サーモスタット等のアクセサリーが付加される。

第4-5図に、GS 500モデルの概形図を示す。GS 500は寸法2,100mm(H)x2,210mm(L)x1,212mm(W)重量は約5,760kgで、スラッジ及び固形廃棄物を同時に焼却することができる。

 

 

 

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