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4. 固形廃棄物関連技術

 

4-1 固形廃棄物-米海軍

 

固形廃棄物(Solid Waste)は、バイオ劣化型(食物屑、紙、カードボード、木等)、非バイオ劣化型(鉄及び非鉄金属、ガラス)及びプラスチック廃棄物に大別される。

MARPOL 73/78附属書Vは、プラスチック廃棄物の船外への廃棄を一切禁止し、バイオ及び非バイオ劣化型廃棄物については第2-1節で述べたごとく洋上廃棄について廃棄物の種類に従って陸岸からの距離を定めている。米国では、1987年に制定されたAPPSではCWAに基づく特殊海域での廃棄を禁止しゼロ廃棄海域を定めているが、艦艇の場合APPSに完全に従うと艦艇としての本来の機能を損なうことから連邦議会は艦艇の固形廃棄物処理に関する特別措置を認める方針を採った。

 

ただし、プラスチック廃棄物については一般船舶並みに一切の洋上廃棄を禁止し、艦上処理後持ち帰って再利用する方針とした。このため、94年度及び97年度国防承認法は1998年12月までに全艦艇にプラスチック廃棄物処理装置(Plastic Waste Processor: PWP)を装備することを決めた。海軍は直ちにPWPの開発に着手し、海軍水上戦闘研究センター、カルデロック・ディビジョン(Naval Surface Warfare Center, Carderock Division: NSWCCD)のアナポリス研究所で陸上試験の後、空母George Washington(CVN73)、空母Theodore Roosevelt(CVN71)、強襲揚陸艦Wasp(LHD1)、駆逐艦Vandegriff(FFG48)等で実艦試験した。

 

1994年5月から11月までの6か月間、空母George Washingtonにはじめて装備されたPWPは順調に作動し、5,000個の処理後円盤(総重量48,500ポンド)を作り出した。日数割りにすると1日120個の円盤が作られたことになる。通常、1隻の空母は典型的な6か月の航海で216,000ポンド(100トン強)のプラスチック廃棄物を産出するといわれているので、George Washingtonの場合は試験も兼ねて通常航海の2倍以上のプラスチック廃棄物が処理されたが結果は上々であった。なお、艦艇のプラスチック廃棄物はボリュームでは全固形廃棄物の38%を占めるが、重量ベースでは6%を占めるにすぎないので、処理後の円盤を持ち帰ることに何等の支障はない。艦上試験終了後、実艦搭載用として最初の22基はウエスティングハウス社に次の21基はテネシー州のユニバーサルテクノロジー社に発注され、いずれも順調に作動し現在では全艦艇に装備されている。

 

PWPは1)プラスチック粉砕機、2)圧縮溶融ユニット、3)閉ループ冷却システムの3つのシステムから成り立っている。第4-1図にPWPの概念図及び作動中の写真を示す。3つのシステムは艦の大きさにより必要個数が異なる。フリーゲート艦では2基の圧縮溶融ユニットと1基の冷却ユニット、空母では5-6基の粉砕機と14基の圧縮溶融ユニット及び7基の冷却ユニットといった具合である。

 

 

 

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