日本財団 図書館


3-4 レクリエーション用ボート業界のWater Watch

 

レクリエーション用ボートは、個々のボートが環境に与える影響は微々たるものであるが、米国の場合隻数が多く全国的に散在するので環境上の影響は大きい。米国で舶用エンジンからの排ガス規制で最初に規制対象になったのも、レクリエーション用ボートの分野である(第6-1節)。

排ガスの他レクリエーション用ボートの環境問題で最近騒がれているのは、ガソリン燃料からのCOを減らすために添加されている酸化剤MTBE(Methyl Tertiary Butyl Ether)がベンゼン、ブタジエンといった有害廃棄物を大気中及び水域に撒き散らし健康に害を及ぼしている問題と、ボートエンジンからの音が沿岸住民に害を及ぼしている問題である。

MTBEの問題は、ガソリンタンクからの漏れによる地下水の汚染が最大の問題点である。レクリエーション用ボートが直接地上取水源を汚染する度合いは少ないが、現在米国ではMTBEを無害な酸化剤エタノールに変える動きがあるものの、石油資本の利害が絡んで簡単に解決されない状況である。

音の問題は、排ガスを減らす技術の副産物として、このところ急速に解決の方向に向かっている。圧倒的に静かになったエンジンに加え、排気システムにレゾネーターを組み込む等により、例えば1999年モデルの水上オートバイは98年モデルより50〜70%静かになったといわれている。

 

米国のボート製造業者の連合体である米国ボート製造業者協会(National Marine Manufacturers Association: NMMA)は環境に優しいレクリエーション用ボートのための基本方針を示した小冊子“Water Watch”を会員に配布し、会員が順守すべき下記運航10か条を示して環境保全を呼びかけている(付録4参照)。

*連邦及び州のトイレット規則を順守すること

*ホールディングタンクのシーウェージは全て陸上にポンプ排出すること

*合法的船体防汚塗料を使用すること

*船体クリーニングにはできる限りバイオ劣化型洗剤を使用すること

*ゴミは水上投棄せず必ず持ち帰ること

*燃料の補給は頂部までとせず万一漏れた場合は拭き取ること

*自船のウェーキ、プロペラウオッシュを監視すること

*推進エンジンは常時メンテナンスすること

*ビルジ油水は完全にコントロールすること

*釣りをする場合は“釣ったら逃がす”動物愛護の精神を守ること

 

以上のうち、NMMAでは特にシーウェージの処理、船体防汚塗料、船体クリーニング、エンジンメンテナンス、ゴミの洋上投棄の問題を重くみている。

レクリエーション用ボートが主として活動する3海里以内の海域では、未処理のブラック水の排出は禁止されている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION