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3. 環境機器開発の基本方針

 

3-1 米海軍のESS−21

 

海軍艦艇は大量の環境汚染廃棄物を産出するが、比較的最近まで艦艇は環境問題では法律の枠外にあった。しかし、この30年来一般の環境問題に対する認識の高まりにおされて、海軍艦艇といえども環境問題について法律の枠外におくことは不可との声が高まり、米海軍は独自にCNO直属の組織でESS−21を立案し、海軍の既存・新造の全ての艦艇を対象に21世紀に世界中に受け入れられる環境に優しい艦艇と舶用機械の開発に取り組んでいる(付録1参照)。

海軍部内でESS−21のビジョンに従って実際に環境機械開発の中心となっているのはNAVSEAで、種々の環境機械の研究開発試験及び評価(Research Development Test and Evaluation: RDT&E)を計画し、海軍の各研究所に実際の開発を指示している。

 

ESS−21は法律で要求される以上に環境に調和した艦艇の建造を目指しているが、基本的ビジョンは次の5点である。

*艦艇は、世界中で艦艇本来の使命や乗組員の快適度を損なうことなく活動し得ること。

*艦艇は、環境にマイナスの効果を及ぼすものであってはならない。

*艦艇は、廃棄物の発生を最小とするように設計されねばならない。

*廃棄物は、できる限り艦上において処理されなければならない。

*廃棄物のロジスティックコスト及び陸上からのサポートは最小でなければならない。

 

上記ビジョンを受け、NAVSEAではRDT&Eの具体的選定を行っているが、環境装置が艦艇本来の戦闘目的や艦隊行動を阻害しないこと、つまり装置の取扱いや保守が乗組員の負担となって艦艇の戦闘能力や平和時の戦争抑止能力を下げることのないようシンプルで効率の良い装置の開発を目指している。また、廃棄物を艦上に長期保存することは乗組員の快適度を損なうので、できる限り艦上で処理する方針で開発を進めている。さらに、陸上処理に過度に頼りすぎると緊急時の即応性が落ちるので、この面からも艦上処理を第一としている。ただし、艦上処理のため作戦が中止となるような信頼性の少ない装置は除外される。

上記に加えて、NAVSEAでは艦艇の一生を通じて処理上のコストが最小となるようなシステムや装置を選定することに力点を置いているが、同時に艦上や陸上の処理要員の安全と健康を損なうことのないよう留意している。

 

NAVSEAが開発中の環境関連のRDT&Eは、下記の広範な分野を対象としている。

*高ボリューム廃棄物(厨房その他からのゴミ、ビルジ油水、ブラック水、グレー水等)

 

 

 

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