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2-3 油濁防止法

 

現在世界で3,300隻を超える10,000DWT以上のタンカーが稼動しているが、そのうち40%は米国に寄港する。また、タンクバージによる広大な内陸油輸送水域を持つ米国では、海(水)域の環境保全問題は油濁防止の側面が非常に強かったことは前述のとおりである。

1989年3月エクソン・バルディーズ号のアラスカにおける37,000トン以上の油流失は米国民に衝撃を与え、これを契機に1990年8月連邦議会は油濁防止法(OPA90)を公布した。OPA90は油濁防止について包括的規定を盛り込んでいるが、その一部としてタンカーの設計やオペレ-ション面の改良、油濁対応法の向上策等を示している。特に、4115節にはタンカーのダブルハル化が規定され、各方面にセンセーションを巻き起こした。

OPA90には油以外のケミカルカーゴの汚染防止条項も含まれているが、OPA90施行後の最初の10年は主として油濁防止、油濁即応の具体策がUSCGを中心に進められた。当初ケミカルカーゴの方はEPAがイニシアティブをとっていたがEPAは対策を進めず、1990年代半になって油濁問題が一段落した後で再びUSCGが中心となって対策を進めている。

 

OPA90が公布された1990年以降、海軍、USCG、民間に油濁対応の機関が設けられ常時必要機器を備えて船舶からの油流失に備えている。海軍の油濁対応機関は艦艇システム司令部(Naval Sea Systems Command: NAVSEA)に所属するSUPSALV(Supervisor of Salvage and Diving)、USCGのそれはNSF(National Striking Force)である。

民間の油濁対応会社には、NRT(National Response Team)等のメジャーオイルが中心になって設立した油濁対応専門会社、及びTITAN Marineのごとく従来サルベージ等を行っていた会社の油濁及びケミカルカーゴ対応兼業等多くの会社が登録されている。

OPA90は貨油、ケミカルカーゴからの汚染防止及び対応に関する技術開発を求めているが、それに応えて上記諸機関も種々のハード及びソフトの開発に努めている。一般に、米国の上記対応機関が所有する大型油回収やスキマーはFramo、Vikoma、Lori等のヨーロッパ製であり、米国製のものは小型回収システム、ブーム、付属品等に限られる。

 

OPA90 4115節では、5,000GRT以上のシングルハルタンカー及びバージは2010年以降米国海域で運航あるいは寄港することができないと規定されている。ダブルボトムあるいはダブルサイド船は2015年まで許されるが、いずれの場合も船令が一定条件を超えないことが絶対条件である。ただし、ルイジアナ洋上揚貨基地あるいは特定貨油分荷基地のみを使用するシングルハルタンカーの使用は2015年まで認められている。

エクソン・バルディーズ号以前から国際的にIMOが中心となってMARPOL 73/78でバラストタンクの位置、タンククリーニングに対する留意事項といったものを定めていたが、全て旗国中心の対応であった。OPA90は米国が米国海域に入る全てのタンカーに対し寄港国(PSC)の権利を発動して取り締まろうとするものであり、具体的取締まりはUSCGが責任を持つこととなった。

 

 

 

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