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2-2 水質浄化法と大気浄化法

 

船舶からの汚染防止に関連する米国内法には、水質浄化法(CWA)、大気浄化法(CAA)、船舶からの汚染防止法(Act to Prevent Pollution from Ships: APPS)、海洋プラスチック研究及び管理法(Marine Plastic Research and Control Act: MPRCA)、油濁防止法(OPA90)、資源保存回収法(Resource Conservation and Recovery Act: RCRA)等があるが、APPSとMPRCAは排出基準的にはMARPOL 73/78と同じであり、また、RCRAは付録3に見られるように陸上処理を要求されるクリーナーやバッテリー等の液体及び固形特殊廃棄物の取扱いと陸上処理について定めたものであり特に解説を要しない。

本報告書との関連で重要な国内法はCWA、CAA及びOPA90であるが、本節ではCWA及びCAAにつき解説する。

 

CWA及びこれを受けた州法とも、ブラック水以外の船舶からの排出については明確な規定がないのが実状である。船舶からは、グレー水(シャワー、シンク、ギャレー等からの排水)、ブラック水、ビルジ油水、冷却水、バラスト水、ボイラー水等のごとく定まった排出口から出る排水のほか、甲板洗浄水や船体防汚塗料浸出液のごとく排出口と関係ない数多くの液体廃棄物が生じる。

工場等のポイントソースからの汚染物質の排出は、CWAの連邦汚染物質排出防止システム(National Pollutant Discharge Elimination System: NPDES)で規制される(33USC 1311,1342)。ただし、原子炉からの放射性物質は別途原子力エネルギー法(Atomic Energy Act)の基準に従わなければならない。

船舶はCWAのポイントソースの定義に含まれている(33USC 1362(14))。しかし、NPDESを具体化しているEPAの規則では、偶発的排出物についてはNPDESの許可を要しない規定となっている(40CFR 122.3)。EPAは最近まで、偶発的廃棄物は環境汚染に重大な影響を与えないという態度であった(38FR 13528)。要するに、CWAが船舶について具体的に規定しているのはブラック水の排出のみである(33USC 1322)。

 

CWAのNPDES許可には、次の2つの排出管理方法が記載されなければならない。一つはそれを受け入れる水域の水質に関係のないポイントソースからの排出物の排出口における技術的排出基準(33USC 301)、他は受け入れる水域の水が続けて其の使用目的を達成するための水質基準である(33USC 1313)。NPDES許可を取得するためには、これら技術基準及び水質基準を同時に満たさなければならない(33USC 1342)。

水質基準は、船舶のように移動するポイントソースにはうまく適用されない。船舶は港ごとに異なる水質基準地域を次々と訪問するので船の排出許可もその都度異なることになり、それらの管理は船舶の運航者にとっては大変な重荷となるので、NPDES許可プログラム全体が船舶にはあまり適用されなかったし許可取得も求められなかった。

 

 

 

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