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2. 海洋汚染に対する規制法

 

2-1 国際法

 

中世末期から近世にかけて海洋の領有や自由をめぐってスペイン、ポルトガル、イギリス等の海洋国が争ったが、1609年オランダのグロテイウスは自由海論を刊行し海洋の自由を理論づけ、現在の公海制度の基礎を作った。19世紀末以降、国際法学会や国際法協会によって不文律であった海洋法を成文化して国際条約に編成しようという試みがなされ、また、国際連盟も法典化に乗り出したが具体的成果を挙げることができなかった。

第2次世界大戦後の1958年、国際連合によりジュネーブで第1回海洋法国際会議が開かれ86か国が参加し、海洋4条約即ち、領海及び接続水域に関する条約、公海条約、漁業及び公海の生物資源保存に関する条約及び大陸棚条約が成立した。いずれも22か国が当事国となれば発効する条件であったので1966年までに4条約とも発効しているが、最も重要な領海の巾については合意に至らなかった。

 

1960年国連が改めて領海の巾だけを取り上げて第2次海洋法会議をジュネーブに招集し88か国が参加したが、この会議でも領海の巾についての合意は得られなかった。その後、海洋科学技術は急速に進歩し海洋開発も大きくその様相を変化させ、海洋資源や海洋環境の問題が生起して海洋法の再検討が必要となり、1974年カラカスに137か国が集まって第3次海洋法会議が開かれ領海12海里、排他的経済水域(Exclusive Economic Zone: EEZ)200海里が大勢の意見となったものの最終的に決定されるには至らなかった。

結局、12海里領海、200海里EEZ、大陸棚、深海底開発、海洋環境保全に関する包括的な国際海洋秩序を定めた国連海洋法条約が発効するのは1994年11月まで待たなければならなかった。

 

国連海洋法条約は17部320条と9つの附属書からなる膨大なものであるが、本報告書に関係するのは第12部海洋環境の保護及び保全(第192条-第237条)及び第13部海洋の科学的調査(第238条-第265条)である。第192条においていずれの国も環境を保護し保全する義務を有するとしており、海洋環境を守ることは国家の一般的義務であることを宣言している。

この結果、自国船はもちろんのことEEZ内における外国籍船に対しても必要な規制措置を講ずるPSCが認められた。前述のごとく、海上輸出入のほとんど全てを外国籍船に頼り、寄港するほとんど全てのクルーズ船が外国籍船である米国にとってPSCの発動は海洋環境保全上非常に重要である。

 

国連海洋法条約は具体的には生物資源や人に対する害、海洋活動に対する害、有害物質の環境への持込み等全ての海洋汚染を対象としており、特に人為的な海洋環境の汚染源を下記6つに区分し、これ等からの汚染を防止するための法律を各国が制定することを義務づけている。

 

 

 

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