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しかし、その市場傾向に変化が見られ、これはオーストラリア製旅客船及び日本製エンジンに対し有利な状況に変わりつつある。

 

2.1.1 高速旅客船事業の採算性

フィリピンの収益性の高い高速旅客船事業を行うにはいくつかの問題点がある。:

→ 低運賃(高品質旅客船の海里あたり賃金は世界で最も低い国の一つ)

→ 高価な燃料費用(燃料費がここ数カ月で更に値上がりしたため、大きな問題となっている。)

→ 高価なメンテナンス費用及び代替部品費用(ほとんどの部品は輸入品である)

→ 高金利(14〜16パーセント)

→ フィリピンペソの貨幣価値の低下(現在1米ドルに対し約45ペソ)

 

乗組員に対する賃金が比較的安価である一方、フィリピンにおける高速旅客船の運行経費全体ではヨーロッパの運行経費の約80パーセントにのぼっている。しかし、運賃はヨーロッパの6分の1から10分の1程度に留まっている。

このことから、フィリピンの高速旅客船事業は、非常に利益率が低く、多くの旅客船就航が赤字の危機にさらされていることがわかる。

 

2.1.2 旅客船事業の性質

多くの旅客船事業者は、中古の従来型の旅客船を購入しており、その多くは日本から輸入されている。これらの事業者は、コスト意識が非常に強く、新規の部品の購入には消極的である。従って、エンジンの代替も通常は中古品によって行い、使用年数が15年程度のエンジンもある。しかし、エンジンを動かすための修理やメンテナンスは行っている。

旅客船事業者の顧客は価格に対し非常に敏感である。Aグレードの乗客(高速かつ快適な旅客船の運賃を支払える乗客で、全体の5パーセント未満)の比率は低く、これらの乗客も、運賃が急激に値上がりした場合には、別の交通手段を選ぶことが予想される。

 

 

 

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