セブ(フィリピン南部)のFBM造船施設はAboitizグループの所有であり、長さ50メートルのカタマラン2隻を並行して屋内で生産が可能である。同造船所は今後2、3年間で中型旅客船10隻程度の生産を計画しており、うち半数はPhilippines Fast Ferry Corporation社に販売される予定である。同計画が進むと、オーストラリアとフィリピンへとの間の高速旅客船建造において大きな競争相手になる可能性がある。
→ 中古船舶:初期の豪州製高速船の導入から時間が経過するに伴い、中古船舶として転売される数が増加しつつある。東南アジアにおける厳しい経済状況の中、この比較的低廉な選択肢に人気のあることがわかってきた。エンジン換装(通常MTUもしくはキャタピラー製)、船体整備に費用をかけても、新造高速船の船価の半分程度で納まることから、同プロジェクトも大きな市場となりつつある。
3.1.3.2.2 市場における日本のエンジンメーカーの評価
本プロジェクトのために面談した各社とも、日本製エンジンが低速用として優れていることを認めたものの、そのいずれも高速船に適するエンジンが供給されていることを知らず、市場の知名度に問題があることが判明した。このため、日本製エンジン搭載のオーストラリア製高速船というコンセプトが理解されるまでには時間がかかる結果となった。
高速エンジンの分野では、後発であるものの、他の分野で有しているメーカーとしての認知、信頼感が、そのまま高速船に継承されていないことから、日本のエンジンメーカーの広報戦略において今後改善を図るべき点だといえる。
もう一つの問題点は、対象市場において日本のエンジンメーカー及びその代理店によるバックアップサービスが欧米の競合各社ほど良くないと評価されていることである。これは、欧米メーカーと現地代理店の関係が、日本のメーカーのそれとは異なり、欧米メーカーの方が、現地代理店に対する関与、指導の仕方が厳しく、バックアップサービス体制がきちんと管理されていると言われている。今回のプロジェクト協力企業A社の代理店に対する評価も、国、地域でかなりばらつきがあった。何れの旅客船事業者にとっても予備部品が迅速に入手可能で且つ修理が容易であることが極めて重要である。A社が市場で販売を伸ばすには、この分野における評価向上が求められる。