しかしながら、本プロジェクトの初期段階では日本製のエンジンを搭載したB造船所製の高速旅客船用のバイヤーズクレジットの可否が明確でなかった。そのため、潜在的顧客の関心を呼ぶことが困難であり、よって現在のところ案件の成約には至っていない。オーストラリアの輸出金融保険公団(Export Finance Insurance Corporation(EFIC))を通して同様な融資を取り決めることは可能であるが、その内容は他社によるものと同様である。有利なバイヤーズクレジットパッケージが提供されない限り、海外の買手の関心を引き、オーストラリア高速船造船所に日本製のエンジンを搭載することは難しいと思われる。
3.1.3.2 プロジェクト外部環境
本プロジェクトを取り巻く外部環境の内、考慮すべき点としては、欧米エンジンメーカーの動向、市場における日本エンジンメーカー評価等があった。
3.1.3.2.1 欧米エンジンメーカー等の動向
→ 欧米のエンジンメーカー:MTU社等の企業は、積極的なマーケティング、優秀な代理店、バイヤーズクレジットにより当該市場において非常に強力である。数年前MTU社は市場シェアを上げるため、多数の高速船向けエンジンを試供品として、もしくは大幅な割引にて供給した。このアプローチは成功し、今やMTU社はフィリピン、シンガポール等の国々における高速船市場で大きなシェアを有している。
→ アジア地域のローカル造船所:これらはオーストラリア造船所に匹敵するような高速旅客船の建造はしていないが、船価の面から競合者となり得る。シブ(マレーシア東部)のメーカーは河川輸送程度の品質の中速旅客船を建造し、ローカル市場にて有力な地位を占めている。