特に、ファイナンスについては、競合メーカーである米国及びヨーロッパのエンジンメーカーがバイヤーズクレジットを提供でき、これが世界市場にて大きなシェアを築く一因となっていた。アジアの旅客船事業者が資金調達力に問題がある場合が多く、本プロジェクトの実施期間中に、他の豪州造船所が受注した例でもファイナンス付きが多く、これが決め手になっている場合があった。
これは従来の日本のエンジンメーカーが造船所と行っている営業形態(値引き、分割払い等)では、対抗できないものであり、この辺りの営業ノウハウの取得、開発が、日本のエンジンメーカーの課題となるものと思われる。加えて、日本のエンジンメーカーは旅客船事業者にバイヤーズクレジットを供与することに対して非常に慎重であり、また、企業の新規案件に対する姿勢も同様である。本プロジェクトにおいても、豪州造船所側から強い要望があったファイナンス関係では、当初、日本のA社も他のエンジンメーカー同様に、本プロジェクトによる最初の売買契約について、割引価格、分割払いでエンジンを提供すれば充分であると考えていたが、豪州との打ち合わせ、マーケットの反応等を踏まえた結果、最終的には、ケースバイケースにて日系商社を通してバイヤーズクレジットが得られるよう手配された。