第4章 高速船の主機関動向
1. 高速船搭載エンジンの動向(概観)
高速船搭載エンジンの全般的な動向について、I.Mar.E.5の主催で2000年11月、ロンドンにおいて開催されたConference ”Propulsion 2001:High Speed Tech”c)における講演の中で紹介された。
講演の概要を以下に示す。
(1) Nigel Gee and Associated Ltd, UKのMr. Nigel Geeの講演
本講演では高速船を以下の種類に分けて分析等を実施した。
・高速旅客船:旅客定員50人以上、速力30ノット以上の旅客船
・高速Ro-Pax船:速力30ノット以上のRo-Pax船
・高速貨物船:速力25ノット以上のRo-Ro船及びコンテナ船
・高速パトロール船、高速作業船:長さ24m以上、速力30ノット以上のパトロール船及び作業船
・高速ヨット:長さ24m以上、速力30ノット以上のヨット
a.高速船の隻数の推移
高速旅客船の隻数は、この十年、1500隻程度で横這い(ラフに言うと、新造隻数(年間50隻程度)とスクラップ隻数が同じ)。
高速RoPaxは、1990年以降建造されてきたが、スクラップはまだ発生しておらず、隻数は年間10〜20%増加してきた。最近はこの市場の成長は減速の兆候があり、あるアナリストはこの市場が5年以内に飽和状態になると予測している。しかしながら、約1500隻の旧来のRoPaxが世界に就航しており、それらの航路には高速船の投入が可能であることから、より大型で高速で積載量の多い船舶設計の出現により、次の十年間は、この市場が更に成長すると予想する。(資料表1参照)
b.新造船の推移(資料表2、図1参照)
資料表2及び図1は、新造船の推移を船種別に示したものである。
高速旅客船は、市場が成長から代替えに向かっていることを背景に減少。高速RoPax船は横這い。高速貨物船は増加。
c.新造船長さの最大値の推移(資料表3、図2参照)
資料表3及び図2は、各年毎の建造船舶の長さの最大値を船種別に示したものである。ほとんどの船種において、船の大きさはかなり一定であることがわかる。高速旅客船ではこの5年間で、大ざっぱに言って50mから100mに増加している一方、高速RoPax船の最大長は130mから140mに、高速貨物船の最大長は300mから350mにとどまっている。高速パトロール船は全て50m以下であり、典型的なものは40m程度である。
5 The Institute of Marine Engineers(英国舶用機関学会)