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第7章:設計と技術的事項

 

7.1 RoPax

双胴型および単胴型の高速フェリーは近年その地位をますます確立してきたが、最新の推進力式を採用した通常型RoPaxフェリーの設計、いわゆる「ファースター・フェリー」に技術的関心が移ってきた感が深い。

この背後にはいくつかの要因が働いている。貨物及び人の輸送ともに一般的に増加傾向にあって、とりわけ貨物の重要性が浮き彫りになっている。大抵の旅客航路では季節による浮沈が大きいが、貨物は1年中あまり変動がない。欧州では、貨物輸送の道路輸送から沿岸海上輸送へのシフトにより海上輸送量を増大しようとする政策的意思が働いていて、一方、内航海運の自由化により、オペレーターが競争力強化に力を入れたことから新造船発注に拍車が掛かっている。SOLAS90とストックホルム協定により、最新のRoPaxの設計では、安全性を強化した新設計の探求が進んだ。

こうした結果、1990年代の特色として、船室スペースを縮小する一方、荷役能力と効率を強化した小型RoPaxと若干の旅客収容能力を備えたトレーラ・フェリーが重視された。航海数の増加または航路に必要な隻数を減らすため、27〜30ノットを中心とした航海速力の向上が必要条件となった。

大型船は悪天候時における旅客の乗り心地と貨物の安全を図るため安定性を十分に確保するとともに、貨物車、乗用車が迅速に昇降できるように設計されている。乗用車とトレーラを分離した設計も多数見られる。

これら大型船は3層の旅客甲板に最大2,750名の旅客と最大250名の乗員を収容し、船室が必要な場合には1,800名分の500室を備えることができる。プルマン式座席を配置してさらに900-190名を収容、することも可能である。この種の船は2店以上のレストラン、映画館、娯楽室/会議室/劇場スペース、複数のバー、スナック・バー、フィットネス・センター、ディスコ、プールなどを備えている。詳細は航路により、また旅客/貨物の比率により大きく異なる。

当初は単に高出力機関を搭載して高速化を実現していたが、RoPaxの第2世代では設計に明瞭な差違がある。船体が長くなり、長幅比が大きくなり、高速に適した船形が採用された。水線面の形状を鋭くした球状船首、細身の前部船体、太い中央部、大型プロペラと長いダックテールを収める小型トンネルを備えた平底の船尾などが典型的な高速指向の特徴となっている。

 

7.2 高速フェリー

ギリシャ/イタリア間のアドリア海航路では高速フェリーの配船が目立っている。Attica EnterprisesのSuperfast Ferriesとクレタ島に本拠を置くMinoan Linesは、ユーゴ紛争及び目前に控えたEUの内航海運自由化よる海上輸送需要増に刺激されて、1990年代半ば以降、船腹の高速化のために投資してきており、この点で、他社に先んじている。大型の高速フェリーでは双胴船よりも単胴船というのが大半の選択である。Fincantieriは1998年に「MDV3000」4隻のうち2隻をTirreniaに引き渡したが、同社はこのタイプを「世界最大の高速フェリー」と呼んでいる。

 

 

 

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