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第1章:概要

 

1.1 RoPax開発の沿革

「RoPax」という用語を最初に用いたのはAalborg Verftで、これは当時開発された新設計を指した表現だったが、その意味は旅客も乗せるRoRo船というだけのことだった。近年では旅客定員、貨物積載能力ともに大きい船をいうようになったが、この条件に当てはまる船舶は各種あるので、きわめて曖昧な用語ということになる。しかしながら、貨物も運べる客船の運航事業者は大抵の場合、貨物を副次的な輸送対象と見てきたので、貨物、旅客の双方を収入源として運航されている船と定義した方が適切といえる。一部の貨物運送事業者は、旅客を新たな収入源と見てスケール・メリットを追求する観点から投入船型を大型化し、RoPaxに適した航路に進出している。

当然のことながら船舶の設計は、市場の進展や規制環境、あるいは技術の変化に応じて進化するもので、RoPaxの設計も時とともに状況の変化に対応してきている。最近ではRoPaxの大型化、高速化が見られるようになった―これは革命ではなく、いわば進化であり、その推進力となった主な要因は、市場における各種の進展である。今後、大型化・高速化の急激な進展や推進方式の抜本的な変革が生じる兆候はない。ごく最近では船主は極東諸国の造船所に好んで発注する傾向が見られ、少なくとも設計が比較的単純な場合には、その傾向が顕著である。

 

1.2 市場を動かす諸要因

新世代のRoPaxの導入に影響を及ぼす主要因として、以下のような要素が挙げられる。

- 市場の規模と成長率

- 地域市場の特色

- 輸送対象構成の変化と他の船種や輸送形態との競合

- 事業構造と戦略

- 各種のショックや外部要因

 

1.2.1 市場の規模と成長率

ヨーロッパのRoPax市場は、旅客、貨物ともほぼ右肩上がりの輸送量の拡大を享受してきた。貨物の方が旅客より輸送量の伸びが速く、全体の伸びは年率約6%である。しかし各種の原因から、伸び率には著しい地域差がある。

貨物量の伸びの影響は、同一船型での高速化よりも主として船型の大型化に現れる。A型RoPaxとB型フェリーとの差は船型にあるので、貨物量の伸びとともにA型が次第にB型に取って代ることになる。同時に、貨物あるいは旅客専用の運航から、RoPaxを含め貨客両用の比重が高まる傾向が明瞭に見られる。

貨物専用フェリーのオペレーターが付加的な旅客運賃収入を狙って保有船をRoPaxか在来型貨客フェリーに切り替える可能性もある。しかし旅客の動きは貨物と全く異なっている。決定的な相違点は季節性である。特徴的な事例として、貨物・旅客それぞれ別個のサービス全シーズン型RoPaxに転換し、夏場はこれを高速フェリーで補完するという手法が採用されている。

 

 

 

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