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同報告書は、米国の水路、港湾、船舶に対する犯罪的テロリストの脅威に確実に対処できるよう備える必要があるとしている。提言には、「テロリストの攻撃を防止、対応する米国の能力を査定する全国的演習を策定し、軍事動員や米国港湾及び水路内の重要なインフラストラクチャーが攻撃対象となった場合のシナリオをこれに盛込む」ことが含まれていた。運輸省、国防総省、FBIがこの提案を実行に移す責任を負うよう提言された。また、「密輸品やテロリストが米国に入りこむ危険を減らすためのより効果的な国際協力を確立する」ことも提案された。

 

特に懸念されているのが、クルーズ船を巻き込んだテロの脅威である。1999年3月に発表された、「海上安全保障に対する脅威と問題2020年」と題された報告書で、海軍情報局とUSCGがこの問題を取り上げている。同報告書は、テロリストがクルーズ産業を次の標的にする可能性があると結論している。以下にこの報告の概要を転記しておく。

 

海上テロ

 

テロリスト組織は、政治的目的を推し進める手段として今後も海上テロを利用しつづけるであろう。1961年のポルトガル籍旅客船「サンタマリア号」ハイジャック事件から、1990年代のスリランカの「タミルの海の虎」による数々の海上テロにいたるまで、有名な海上テロ事件により、差し迫った危機感が生じ、アクションが取られてきた。海上テロを議論するに際して、テロリズム全般の問題とは異質な、より大きな現象としてとらえるべき顕著な傾向が見られた。事件をメディアが大きく取り上げることによって、一般の関心を集めた場合は特にそうである。しかし海上テロは新しいものでもなく、陸、そして空で発生するテロとほとんど違いはない。実際、海上テロは陸上テロと同じ形と方法で発生している。

 

1980年代末から1990年代の間に見られたテロの傾向は、今後も続く公算が強い。世界のテロ事件の件数は減少しているが、テロによる死傷者の数は逆に増加している。人質を取るという典型的なテロリスト戦略は、世界の対テロリスト軍事力がますます高度化していることもあって、減少傾向にある。

 

 

 

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