海事保安会議の役割は、海賊対策、テロ対策措置の話し合いの場を提供することである。同組織は、クルーズ産業、特にクルーズ船を巻き込んだテロ対抗措置の開発に力を入れているようである。海事保安会議のコンタクト先として紹介された2人は、ルネッサンス・クルーズ社の警備部門で雇用されていた。どちらの人物も海事保安会議の活動についてはコメントを渋った。
外国籍で運航する米国ベースの海運会社の多くを代表するリベリア船主協会(Liberian Shipowners Council:LSC)に、メンバーが海賊問題にどのように対処しているかを問い合わせた。同協会は、積極的に海賊問題をフォローしている。LSCは通常、月刊広報に海賊関連記事を掲載しており、LSCのディレクターは国連で、海賊行為が頻発している沿岸国の政府がもっと強力な対策を講じることを主導する発言をしている。LSCディレクターによれば、海賊事件はその件数も、残虐度も高まっている。海賊行為についての標準的な定義が存在しないことが問題だと彼は考えている。また、海賊行為は米国に直接影響を与える問題ではないため、この問題の重要性について関心度も理解度も比較的低い結果となっている、というのが同氏の意見である。LSCは、メンバーに対して海賊襲撃対処策として、IMO Circular 623に示されるガイドラインに従うように忠告している。すなわち、襲撃を受けた場合、消防用ホース、照明、その他類似の設備を用いるが、襲撃者と交戦はしないというものである。最近、LSCディレクターは、海賊被害が頻発している海域で海賊を奇襲、拿捕する能力のある商船に偽装した重武装船(仮装巡洋艦)の利用に業界が資金を提供するよう提案して、報道でしばしばその発言が引用されている。
海賊行為の定義
国際海事局(IMB)は「海賊行為とは、盗難やその他の犯罪行為或いは暴力を振るう目的で、船舶に乗り込む全ての行為」と定義している。
海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)によれば、海賊行為は「民間船舶や民間航空機の乗組員あるいは乗客によって個人の目的のために犯される不法な暴行や拘留、あるいは略奪行為がi)かii)の場合:(i)公海上で、他の船舶や航空機に対して、あるいは人及び、船舶上や航空機内にある物品に対して犯される行為、(ii)その国の裁判権外の場所で船舶、航空機、人、物品に対して犯される行為」と定義されている。