さらに、米国船主数社に、海賊に襲撃された場合にどのように対処するつもりか、また海賊問題が今後どのように展開すると考えているか問いあわせた。バルク船5隻を運航しているある船主は、海賊問題は自社とは関係ないと考えている。同社の運航管理者によれば、同社の船舶は世界中で運航しているが、通常、海賊被害の多発海域では運航しておらず、特に海賊に対する予防措置も取っていないし、海賊の襲撃に対する特別な対処策も採用していないとのことであった。一般貨物船、バルク・キャリアー35隻を運航している別の米国船主会社は、海賊の襲撃に対して特に予防措置も対処策も取っていないと回答した。「マラッカ海峡は20ノットで通りすぎるのが海賊対策」だというのが、同社のオペレーション担当者の答えであった。(マラッカ海峡を20ノットで航行できる訳はなく、「何の手も打っていない」ということである。)パーセル・タンカーの大規模な船隊を世界中に展開しているある米国船社は、海賊対策と、海賊問題の今後の展開について次のような見解を示した。
わが社はいわゆる「海賊」マニュアルは備えていない。しかし、船舶管理マニュアルと安全マニュアルで手順はカバーされている。わが社の船にはそれぞれ書庫を設置して文献を備えているが、その中に特に海賊を扱った本が2冊含まれている。
わが社は、予防策と対応策を含む手順を定めている。この手順は、家の所有者が自宅周辺の安全性を高めるために取る措置と類似したものである。襲撃を決意した泥棒/海賊を思い留めさせるのは困難である。
今後の展望は芳しくない。船上に備えられる現金の金額は昔より大幅に減る傾向にある。船員には(少なくともわが社では)銀行振り込みで給料が支払われることが多く、船舶に必要な物品の購入は、陸上のオフィスが手配した方が簡単で安くつく。船長が現金を保持するよりも、コンピューター送金や電報振り込による支払いの方が簡単である。一方、より暴力度が増し、海賊が大胆になるにしたがって、海賊被害は増加する傾向にあるように見える。わが社はこの問題に対して、専門家を使って、航海士、乗組員の訓練を行うこと、また予防措置を講じることで対処を図っている。