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以上から、ベイトマン下院議員の死去やカイケンデール下院議員の落選といった変化はあるものの、上下両院ともに海事政策の抜本的変更を招くような議論がなされる可能性は低い。なお、新規当選議員の所属委員会などは2001年1月3日に第107議会が開会するまで確定しない。

 

(WTOとジョーンズ・アクトに代表される内航保護制度の関係)

ジョーンズ・アクトは、WTOで定期的見直しと交渉の対象となっている。2000年の交渉が最初の見直しの機会であり、我が国、EU等がその存在に疑問を呈したのに対し、米国側はジョーンズ・アクトが必要とされる環境に変化はないとしている。

ただし、ジョーンズ・アクトはWTOで今後2年毎に、その必要性が見直されることとなっている。米国の海事関係者の中には、米国通商代表部(USTR)は、ジョーンズ・アクトの擁護に差程熱心とはいえず、むしろジョーンズ・アクトが他のサービス分野の交渉の取引材料とされると心配する者も多い(特に、ブッシュ新大統領は、ゴア副大統領とは異なり、選挙戦中ジョーンズ・アクト擁護を明言していない。)。この場合、ジョーンズ・アクトのどの分野で譲歩を図るかが争点となるが、USTRが譲歩を示す条項として、以下のような要件が指摘されている。

 

○米国人所有要件(米社所有であっても、一般に外国資本の比率が25%以内でないと「米国人所有」とはみなされない。)

○米国建造要件

○米国船籍要件

○米国人船員配乗要件

 

この内、米国人所有要件は最も譲歩しやすい要件であると理解されている。外国資本の比率の引き上げや永住居住者等の一部外国人への門戸開放などは、米国としても比較的抵抗が少ないものと予測されている。一方、米国船籍要件と米国人船員配乗要件は国家安全保障の観点から譲れない分野であり、また、同様の貨物留保政策を実施している国が多いことから、交渉相手国しても許容しうる要件であると予測されている。

 

 

 

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