第5部
ジョーンズ・アクトに代表される内航保護制度の今後の見通し
1. 内航保護制度に関するまとめ
この数年、ジョーンズ・アクトは米国内外で、海事産業関係者に限らず、広い方面から攻撃を受けてきた。しかし、この内航保護制度に対する議会の支持は依然として強力である。特に、伝統的な海事産業州であるバージニア州、カリフォルニア州及びメキシコ湾岸の各州(ルイジアナ、アラバマ、フロリダ等)における支持には根強いものがある。
(支持派と改革派の根拠)
ジョーンズ・アクトを巡る議論には、いくつかの焦点があることが判る。
○ジョーンズ・アクト支持派の根拠
・米国船社、米国人船員、米国造船所等からの税収
・造船業は国家の安全保障上必要不可欠な産業であり、ジョーンズ・アクトは造船業を維持するために重要な需要基盤
・国家の非常時に内航船舶や米国人船員を徴用するためにはジョーンズ・アクトによる内航保護が必要
・米国周辺海域の海上安全の確保及び海洋環境の保全のためには、ジョーンズ・アクトによる内航保護が必要
○ジョーンズ・アクト改革派(反対派)の根拠
・米国経済全体から見れば経済的に損失
・他の運輸産業に比べ不公平なまでに過剰な保護による競争の歪曲
(例:米国国内航空路線には、外国製造の航空機が制限を受けることなく就航しているのに比し、内航海運会社は外国建造船舶を使用できない。)
・ジョーンズ・アクトにより実際に内航船の建造需要が発掘されたことは少なく、米国造船業に与える効果は少なく、むしろ内航商船隊の高船齢化を促進