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実際、リスト全体を見渡すと、大多数が委員会すら通過していない。米国議会内部の政治的気運はジョーンズ・アクト維持に強く傾いているため、同制度の廃止または修正を真剣に検討することは実質的に不可能である。

1990年代半ばには、ジョーンズ・アクト制度改革の非常に積極的な動きが見られた。中西部州選出議員は、議会の支配政党が変ったことにより、共和党の反規制、自由貿易支援のレトリックを利用して内航制度改革を押す機会が開けたと考えた。カンサス州選出の上院議員と、ミシガン州選出の下院議員が最も強力に改革を唱えた。残念なことに、両議員ともに各院では下位議員であり、どちらもほんの少数の議員の支持しか取り付けることができなかったのである。第106議会では、反対運動の音頭を取っていたジョーンズ・アクト改革同盟が崩壊し、同盟のリーダーは別の事業にくら替えしてしまった。ジョーンズ・アクト改革の見込みがないことを証明するもうひとつの事実は、下院におけるジョーンズ・アクト反対運動の先鋒であったニック・スミス下院議員(共和党ミシガン州)は、過去2期にわたってジョーンズ・アクト改革法案を提出していたが、今期は法案の再提出さえ行わなかったことである。近い将来、ジョーンズ・アクト改革が真剣に取り上げられることはまずないと考えられる。

次の表は第100期議会(1987-88)以降に提出された、1920年商船法または1886年旅客船サービス法の改正法案を概説したものである。前述したように改革を図る法案は成立に近づいたことすらない。実際、ジョーンズ・アクト制度の問題に関連した法案で、承認されたのはわずか一法案だけである。それは1988年6月のS. 1988である。同法案については第3部に概説する。その他には、列挙した法案のうち成立したのは、米国籍商船に対して政府運航助成を提供するH.R. 1350、1996年海事安全保障法のみである。これらの船舶はジョーンズ・アクト航路制度の枠外で運航するため、同法は改革論争の方向にはほとんど影響を与えなかった。大統領署名にまで到達した法案はこの他に存在せず、それどころか大部分は委員会すら通過しなかった。

 

 

 

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