第2章 豪州のマリーナと関連設備
豪州のマリーナ産業は、ここ20年の間にかなり高度化されたとは言え、未だに設備や規制が州によってまちまちである。
2.1 地域間の相違
豪州のマリーナには、少数のスィング・ムアリング(anchored floatなので、舟艇が風や水面表層の動きに従って動く)のスペースを有する小規模なボート小屋形式のものから、ホテル、レストラン、売店などの各種支援施設が併設された本格的なものまである。
ニューサウスウェールズ州には多数のマリーナがあるが、その大半がボート小屋とスウィング・ムアリング・スペースを組み合わせた部類に入る。これは、同州にはスウィング・ムアリングに適した静穏な湾や入江が数多く存在するからである。しかし、ポート・スティーブンズ市のザ・アンカレッジや、シドニーのバーケンヘッド・ポイント・マリーナ等の高級施設もいくつかある。
豪州の中で二番目に人口の多い州であるビクトリア州では、大型マリーナが比較的少ない。また、州内の湾は大抵波が荒いため、スウィング・ムアリングにも余り適さない。メルボルンを例にとると、大規模なマリーナで都市部に近いのはセント・キルダ・マリーナのみである(因みに同マリーナには、wet berthが250、dry berthが400ある)。その他の大半は、ヨット・クラブがメンバーのために提供しているfloating marinaである。このためビクトリア州では、プレジャーボートをマリーナで保管するより、所有者がボートランプのあるところまでトレーラーに載せて運ぶことが多い。
クィーンズランド州には、各種の観光施設が整った大型マリーナが多い。ゴールド・コースト地域では、この種のマリーナは運河沿いの住宅開発と連係した形で設置されており、プレジャーボート用の安全なバースを提供している。ケアンズまでの海岸沿いには、最高級のサンクチュアリー・コーブ・リゾート・マリーナをはじめとして、バースとスウィング・ムアリング・スペースを併せ持ったマリーナが多数ある。最近開発されたハービー・ベイでは、マリーナのバースと別荘住宅がパッケージとして売りに出されている。
西オーストラリア州と南オーストラリア州では、マリーナの数は少ないものの、大規模(バース及び係留設備が150以上)施設の占める割合が大きい。
北部準州のダーウィンでは、カレン・ベイに新しいマリーナが建設中で、12ヘクタールの港に、宅地が116カ所、コンドミニアム用地が5カ所、更にホテル用地、商業用地及び小売店用地なども取り入れられ、総額6,000万ドルの一大開発プロジェクトとなっている。