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本案も日の目を見ていないが今後ともジョーンズ・アクトについて検討することだけが決定されている。

米国内建造船の建造費が高く、商業貨物を輸送して利益を出し得ないことはよく知られたことであるが、ジョーンズ・アクトから米国内建造要件を取り除くことはただでさえ船舶建造量の不足に悩む米国造船業界を窮地に陥れる。最近まで新造船を控えていたジョーンズ・アクト海運業者が新造船の発注を始めたのは、近い将来にジョーンズ・アクトの改正はないと判断したためであろう。

1999年12月の始め、米大陸-アラスカ間航路を運航するTotem Ocean Expressは2隻のRO/RO船を3億ドルで発注することを決定し、またSMST(Santa Maria Ship Owning and Trading)はハワイ航路用に2隻の700TEUコンテナ船の新造を決めている。上記のような毎年の議論にもかかわらず、ジョーンズ・アクト改革派は改革の強力な推進者の一人マッケイン上院議員が大統領となる望みがなくなった現在、改革への道程が再び険しくなっていることを実感している。

 

その他直接米国商船隊の強化とは結びつかないが海運業を保護する法律は年々数多く成立している。1999年下院歳出委員会はカリブ及び中央アメリカ救済・経済安定法(Caribbean and Central America Relief and Economic Stabilization Act, H.R.9844)を可決した。

本法はクレイン下院議員の提出したもので、米国或いはカリブ諸国の材料でカリブ海地域で製造されたある種の繊維製品或いはアパレル製品に対して関税及び割り当て数量を廃止することを盛り込んだ法律であるが、荷主とキャリア双方にとって歓迎すべきものである。

 

カリブ海貿易の自由化は1994年に成立した北米自由貿易協定(NAFTA)の延長線上にあり、2005年迄に計画されている米州自由貿易圏(Free Trade Area of Americas)の前触れともいうべきものである。

NAFTAの場合、カナダと米国は国情が似ているが、メキシコにおけるコンテナの利用は設備の関係から限られており、国際貨物を扱っている30港湾のうち14港のみにコンテナ設備が設けられている。メキシコの港湾設備の近代化が遅れているため、メキシコの輸入業者は米国以外の貨物の輸出入を貨物船の寄港頻度、効率の良い貨物捌き、コスト安等の理由で米国のヒューストン港或いはロスアンジェルス港としたがるので、NAFTAが栄えればヒューストン港やロスアンジェルス港が栄えるという関係になっている。

 

米国の南部の諸港は麻薬の取り締まりに精力を使っている。ショウ下院議員は46億ドルに及ぶ関税承認法(H.R.1833)を起案し通過させた。彼は南フロリダのフォートロダーデール出身であるがパームビーチやフォートロダーデールを含む南フロリダの諸港に40人の関税職員が増員され、コンテナや自動車中の積載物の内容が分かるX線装置等の最新検査装置の購入が可能になったと地元の港湾協会誌は報道している。

 

 

 

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