MSPは10年間にわたるプログラムであるが予算は各年に割り当てられる。海運界の当面の関心事は、M&Aの影響によるMSP予算の削減の可能性であるが、現在のところそのような動きは出ていない。
MSPの支出は年に1億ドル以下と定められておりこの程度の支出はワシントンの予算規模からすれば問題にならない位の小額であり、事実M&A問題が起ってからMSP予算減額或いは廃止の組織的運動もなく、逆に助成を受ける側から絶対的な支持を受けている。
主受益者の一つである海運組合の支持は絶大であり、この支持を押し切ってMSP予算を云々するだけの政治的価値はない。
海運界の次の関心事はMSPが終了する2007年にこれに代わるプログラムが用意されるかどうかということであるが、現段階ではどちらとも断言できる状況にはない。この種の立法活動は土壇場になるまで方針が定まらないのが過去の歴史である。逆に言うと土壇場の状況で代替プログラム法案の可否が決定される。 ODSは融通の効かない、オペレーターに対するコスト低減の刺激策を含まないことで広く批判の対象となっていた。ODSがMSPに置き換えられた1996年にはODSはほぼ自然消滅状態であり、船舶による米国の国際貿易量のわずか2.9%のみが米国籍船によるものであった。(表2-5)
この様な状況の中、ODSに代わるものとしてMSPが産業界の各方面で長期間討議され、議会で承認された時、海運界は米国商船隊を再興に向かわせる分岐点として実質以上に歓迎した。
問題はMSP承認の大統領の署名のインクが乾ききらぬうちにAPLとライクスが、続いてシーランドが外国の海運会社に買収されたことである。MSPの助成額ではどうにもならない程運賃率は落ち込み、1999年5月に発効した1998年海運改革法も未だ実効をあげていない状況で、いくつの海運会社が生き残れるかが問題となっている状況の中、2007年における海運界の状況も定かではない。
2007年にMSPに代わるプログラムが用意されるかどうかは、MarAdがAPL、ライクス、シーランドに示した苦肉の策がうまくいくかどうかにかかっている。2007年までに起きる紛争でMSP船が徴用され、MarAdの思惑通りに動いてくれる必要がある。また2007年頃に米国海運界が1996年当時と同じ状況であることが必要であるかもしれない。