4-2 海運業のM&AとMSP
MarAdは戦時或いは国家非常時に国防総省の策定した要求に答えて商船を調達する義務を負っている。そのためMarAdは常時政府所有の国防予備船隊(NDRF)や即応予備船隊(RRF)のメインテナンスを行っている。
また、MarAdは国家安全保障計画の策定、訓練、非常時のコミュニケーション、海運総合計画、戦時保険、港湾の非常事態下での使用計画等を常日頃から検討している。
上記とは別に不測の事態に備えて1996年の海事安全保障法(Maritime Security Act of 1996: MSA)に基く海事安全保障プログラム(Maritime Security Program: MSP)が用意されている。
MSPは1996年を初年度とする10年間の運航助成プログラムであり、国際航路に就航している米国船主、米国人配乗の米国籍船に与えられているが、米国造船所建造要件はない。
MSPは従来の運航助成(Operation Differencial Subsidy: ODS)にとって代わるもので年間1億ドルを上限とする運航助成金を最大47隻の船に与えて運航コストの高い米国籍船、米国船員の存続を計ろうとするものである。
MSPの助成金は1998会計年度には表4-2に示す10社47隻に与えられている。MSPに参画するために優秀な外国籍船が米国籍に転籍して、米国商船隊の質の向上に寄与していることは特筆すべきことである。1996年にMSAが発効してから船齢10年以下の近代的ライナー12隻及び船齢5年以下のコンテナ船3隻合計15隻が米国籍に編入されMSP発足当初の船と入れ替えられた。