5-3 NSWCCDとのビジネスの進め方
NSWCCDは、民間企業への技術移転を下記5つの方法で実施している。何れの方法も日本企業の参画が可能である(NSWCCD Director、Technology Transfer Dick L. Bloomquist Tel:+1(301)227-4299)。
* 民間基金による作業契約
* NSWCCDと民間との共同開発契約
* NSWCCDの所有する技術のライセンス契約
* SBIR開発契約
* 海軍研究開発契約
一般に、連邦政府の研究機関の開発成果は、積極的に民間企業に移転することが奨励されている。政府研究機関の各々に技術移転を担当する部署が置かれているが、これらの部署は連邦政府研究機関技術移転コンソーシアム(Federal Laboratory Consortium for Technology Transfer:FLC)を結成し情報交換に当たるとともに、優れた技術移転に対する表彰等を行っている。
NSWCCDは過去5年間に4回FLCから表彰されているが、最近の受賞はNSWCCDが開発した心臓の筋肉性振動や脳のてんかん性発作に応用される混沌状態コントロール技術についてカリフォルニア大学ロスアンジェルス校(University of California at Los Angeles: UCLA)との間で交わした商業化契約に関するものである。本技術は、UCLAからMedtronic Inc.及びControl Dynamics、Inc.にサブライセンスされ、多くの人命を救うことになる。
民間基金による作業契約は、NSWCCDの設備を使ってある製品のテストをするような場合に利用される。このカテゴリーの場合、日本の企業がNSWCCDに作業を依頼して最初から断られることはないが、赤外線シグナルや音響関連のごとく軍事技術的要素の多い分野ではNSWCCD側で企業側の提案を調査後断られることが有るかもしれない。
提案が受理された場合、NSWCCDと企業側研究者によって作業が進められるが、これらの作業によってパテントが取得された場合の取扱いは常に問題となるので、最初の契約ではっきり決めておく必要がある。米国政府関連機関に対するライセンス供与権は、NSWCCDが持っていた方が良い場合が多い。また、民間会社の基金で購入したり、製造して研究に使用した物品に対する所有権も、その管理方法も含め最初に契約書で決めておく必要がある。
このカテゴリーの場合、特に大切なのは研究成果の秘密保持の問題である。研究成果についてNSWCCDは絶対に第3者には公表しないが、研究に参画する企業研究者の個人情報が第3者に流れることはある。また、研究契約に入っても不可抗力等によって研究の中断が予想される場合は、最初の契約書に返済或いは賠償に関する取り決めを入れておく必要がある。