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4. 軍事技術の流失防止関連法規

 

4-1 米国内法と管理体制

 

軍事技術は繰り返し述べるごとく戦争に勝つため、或いは戦争を抑止するための技術であり、敵性国に流出することを最も恐れるため、自由に民生化したり海外に輸出したりすることは各国の国内法で禁止されている。米国武器輸出管理法(Arms Export Control Act:AECA)の第38節は大統領に軍事技術、即ち武器及び付随サービス、関連技術の輸出入を管理する権限を与えている。本件に関する実際の法律の制定は国務省(Department of State:DOS)政治軍事局交易管理部が所掌している。しかし、軍事技術の詳細を知っているのはDODであり、DODにも後述のごとくその立場からの民生転化、輸出を検討する部局があるが、最終的に高度な政治的判断が必要なため法律の制定権を握っているのはあくまでDOSである。

 

米国は現在世界唯一の軍事大国であり、軍事技術の流出防止関連法規も他国の追従を許さないほどに整備されている。具体的施行細則は22CFR、Subchapter M-International Traffic In Arms Regulationに詳述されている。Subchapter-MはPart120からPart130までの11Partで成り立っている(付録2)。Part121-The United States Munition List(USML)に輸出が禁止されている軍事技術を規定しており、変更はその都度官報(Federal Register:FR)に公表される。また、定期的にDefense Trade Newsが発行されている。

米国は核弾頭を有するミサイル技術、原子爆弾技術の流失に敏感で、多くの頁数が割かれている。また、Part121.15には敵性国への輸出が禁止されている艦艇の種類を列挙しているが、舶用工業製品には特別の規定はない。これは舶用工業製品が野放しであるということではなく、後述のごとく軍民両用製品としてDOCの管理下にあるからである。

 

Part126.1には米国から軍事技術を輸出したり、逆に米国に輸入することを禁止する国の名が列挙されている。ただし、これらの国はその時の世界情勢によって大統領権限によって変更することが認められている。現在、列挙されている輸出入禁止国は以下の13か国である。

アフガニスタン、アルメニア、アゼルバイジャン、べラルース、キューバ、イラン、イラク、リビア、北朝鮮、シリア、タジキスタン、コーフレイン、ベトナム

軍事技術の民生転化で最も厳しく規制されるのはUSMLに記載される武器及び関連技術であり、一度USMLに記載されたものの転化は容易ではない。

 

軍事技術の流失防止の元締めは前述のごとくDOSであるが、DOSが全て詳細に把握することは不可能である。また、DOSにデータを供与する必要から関連する省庁は後述のごとく軍事技術流失防止のための機構を独自に持っている。宇宙開発のNASAや原子力開発を所掌するエネルギー省はその一部が軍事目的に利用され、その意味でDODに近いので理解しやすい。DOCは軍事、民生の両方に用いられる(Dual-Use)製品及び関連技術、ソフトウェア、日用品等の輸出について規制する法律を所掌している。

 

 

 

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