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米国における軍事技術の舶用工業への転化の実態調査

 

JETRO NY

舶用機械部

 

1992年に誕生した米クリントン政権が冷戦構造終結という世界情勢の激変に対処して打ち出した数多くの革新的産業科学技術政策は、全体的としてみれば好結果をもたらし、米国は史上例をみない長期の好景気を持続し、国家財政は黒字に転じ、世界における米国の優位を揺るぎないものにしている。

冷戦構造の終結により、軍備を保有することの本質的な目的が、国家間の対決の解決から世界的に同時多発する地域的脅威の除去に移ってきているが、同時に、軍事技術や軍民両用技術の秘守事項、秘守相手にも大幅な変化をもたらした。

軍事技術は国家の総力を挙げて開発されるため、その技術レベルは高く、かつ、日進月歩であり、民生技術として利用された場合に生活の向上に貢献するものも多く含まれることから、軍事技術の民生転化は多いにこしたことはない。一般的には、軍事技術も国民の財産であるという考え方から、開発後ある期間を経て国家安全保障上支障無しと判断された時点で民生化されてきた。

現在では、米の軍事技術開発予算は戦争のための技術のみならず、種々のメカニズムで軍民両用技術の開発に使われている。また、クリントン政権は軍研究所で開発されたものの活用されなかった開発成果を民生転化したり、新しい技術テーマにつき国と民間が資金を出し合い軍研究所の頭脳を導入して研究を進めるコストシェアリング・プロジェクトや、軍研究所の独自の開発成果や設備、頭脳を利用できるメカニズムを構築した。

戦争のための技術以外の研究としては、例えば環境問題があげられる。今日では、艦艇といえども環境問題は避けて通れない。大量の武器保管スペースを必要とし、多数の乗組員が乗り込み、航海期間も長くなりがちな艦艇にとって、環境問題は一般商船以上に頭の痛い問題であり、軍の研究所の重要なテーマとなっており、今後とも目が離せない。

本レポートでは、米国における軍事技術の舶用工業への民生転換の実態について、その概略を紹介した。関係者の参考に資すれば幸いである。

 

 

 

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