刊行によせて
当財団では、我が国の造船関係事業の振興に資するために、「造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業」を実施しております。その一環としてジェトロ船舶関係海外事務所を拠点として海外の海事関係の情報収集を実施し、収集した情報の有効活用を図るため各種調査報告書を作成しております。
本書は、(社)日本舶用工業会および日本貿易振興会が共同で運営しているジェトロ・ニューヨーク・センター舶用機械部 園田敏彦駐在員のご協力を得て実施した「米国における軍事技術の舶用工業への転化」に関する調査結果をとりまとめたものです。
冷戦終結をはずみとして、各種軍縮会議の活発化、対人地雷全面禁止条約をはじめとする各種兵器の使用制限に関する条約が発効されたり、署名や実行を待たれており、軍縮へ少しずつ世界が動いております。多大なる防衛費の負担増を避ける意味合いもあり、軍縮は各国の国家安全保障体制の重点事項に変化をもたらしております。特に唯一の超大国となった米国は、国家間の対決より、地域紛争、テロリスト対策へとその重点を移しております。それに伴い国家機密であった軍事技術はその範囲を変えつつあり、その守秘範囲にも移動が生じ、米国では、これら多大なる研究開発費をかけた軍事技術の民間活用により産業・経済の発展を促す政策をとっております。軍事技術は、最先端の技術であり、これら最新技術の民生化は、今後の産業発展に大いなる影響を与えます。本調査報告では、軍事技術の舶用工業に対する民生化を取り上げ、米国の当該分野における実態を調査したものです。
関係各位に有効ご活用いただければ幸いです。
2000年9月
(財)シップ・アンド・オーシャン財団