VUMSは、修理作業の能力のある海外工場を更に設立しようとし、レスポンス時間を削減し、顧客に対するサービスの向上を図るために部品を貯蔵する場所を検討していた。また、同社は、新たに拡大した製品分野が、これまでVickersとUlsteinのそれぞれでは存立不可能であった場所にも事務所の設立が必要になる可能性があると考えた。
3.2.2 Rolls-Royce
軍艦と商船の双方にわたる市場に対して完全な統合パワー・システム(fully integrated power system)を提供するR社の能力は、大きな機会を提供するものとなると考えられる。さらに、その能力は、R社が統合推進システムの設計・供給に対する顧客の増大する要望に応えることを可能にしたと考えられる。
R社の主要なターゲット市場は現在以下のとおりである。
・オフショア施設への供給とサービス
・オフショア生産と探査
・クルーズ船、旅客船及び貨物船
・海軍
・漁船
・タグ、作業船及び沿岸フェリー
R社は、販売とアフターサービスのネットワークのレヴューを行っているところであるが、旧R社とVUMSの権益の焦点が異なっていたことから、大幅な合理化や組織の再編はなさそうである。
現在のところ、部品や原材料の供給業者及び下請負業者に対するレヴューの計画はない。
4. 論評
VickersによるUlsteinの買収は、舶用推進装置と位置制御システムのメーカーの強力な連合を作り出した。それは、広範囲な領域の最高品質の製品を開発する能力を提供するとともに、製造活動の組織改正や販売・サービスネットワークの合理化を通した運営コストの削減をもたらした。VUMSを買収した以降、R社が運営の組織改正に関する決定を行っていないことは興味深い。結果として、R社は贅肉が無くなり適切な組織になったVUMSの恩恵を受け、VUMSのR社への統合がこれまでのタイミングの中で最も単純であったように見受けられる。
VUMSとR社の製品とサービスの組み合わせは、顧客に統合されたパワー・システムと推進システムのパッケージを提供し、また、海軍市場と商船市場にまたがる経験を結びつけた。
R社は、常に製品領域の強化を追求している会社である。それゆえ、顧客に統合パワーシステムや推進システムの提供を拡大できる製品・サービスを持つ他の事業を将来R社が買収することは驚くことではない。