5. 結論と展望
ポーランド造船業は1990年代初めの深刻な不況の状態から、過去10年間に力強い回復を見せた。この過程で一連の問題が業界に降り掛かったが、中でも重大なものを以下に列挙する。
・80年代末期から90年代初期にかけて多数の案件を低価格で受注したこと。それは造船助成があって初めて採算が取れるような価格だった。91年に造船助成が撤廃されたため、この種の契約は赤字となった。各造船所の近代化努力、建造船の販路として新市場を開拓する努力を助けるような先取り的措置を政府が取れなかったために、この状況はさらに悪化した。
・ポーランドの資本市場の未発達。必要とする信用保証や資金を提供できるような、国際銀行との結び付きを作った造船所のみが、その弱点を克服することができた。
・92年末のコメコン体制の崩壊後、東欧圏内の多数の客先との従来からの取引関係の喪失。
・世界造船市場における競争激化、特に韓国の攻勢により、ポーランドの造船所は90年代の大半にわたってタンカー建造などの従来の造船受注をあきらめる他なかった。
・ポーランドの造船所で使用している時代遅れの機器と工作方法。
・国際水準からして過剰な人員と低生産性。生産性は向上したが、一部の作業を専門企業に下請に出すことがあまりできないため、人員の大幅削減は実現しなかった。
・超インフレ、高金利、さらに90年代半ばにはズローティ高などの経済的要因。
その後の回復には、以下のような要因が寄与した。
・国内各造船所の建造船種の多様化に成功したこと。90年代初めに冷蔵船受注、そして半ばにはコンテナ船受注への依存が非常に大きかったことを考えれば、多様化は極めて重要だった。90年代末頃には、各造船所は多種多様な船種を建造するようになり、単一の市場部門での新規受注の低迷によるリスクを低く抑えることができた。
・高付加価値部門への集中。80年代と比較して、現在のポーランドの新造船では技術的に高度な船種がはるかに大きな比重を占めている。