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同社は、EBRDからの資金供与の見込みがありながら、1997年にグディニア造船所の支配権獲得に失敗したが、それ以降も、他国の造船所に投資する機会を求めていることは周知の事実である。98年度年次報告書では、この動きが「ポーランドの造船産業を集約し、世界最大級の造船所とも有効に競合し得るような傘下企業を創り出す」という狙いを持った戦略の一環であることを明らかにしている。

グディニア造船所買収に成功していれば、シチェチン造船所は必要とする生産能力の拡大とともに、他の市場部門へのアクセスも獲得していたはずである。建造船種では両社の間に重複があまりなく、グディニアは50,000DWT超の船舶を建造する能力があるので、新たな商機が創出されたであろう。

 

船舶設計:

シチェチン造船所は各種の船舶設計で成果を上げたが、1990年代で特筆すべきものとして以下が挙げられる。

 

・1,730TEU型コンテナ船:南米船主等から受注した。航海速力が高く(19.6ノット)、無給油で長距離(15,000海里)を航海できることから、特にチリ船主に人気がある。航続距離が長いため、給油の都合をあまり考慮せずに弾力的な運航が可能であり、南米地域から遠隔地への輸送に適している。

・3,100TEU型コンテナ船:1999年に、ドイツとチリの船主から7件の受注があった。これは同造船所の50年の歴史の中で、最も価値の高い契約といわれている。2001−02年の引渡しが予定され(航海速力は22ノットといわれる)ており、シチェチン造船所の建造船では最大船型となる。(Otra Nowa船台の稼動開始前には同造船所で建造可能の最大船型は1,730TEU型だったので、このような受注は不可能だった。)

・オープン・ハッチ式45,000DWT型撒積船:第1船を1995年7月に受注した。航海速力15.5ノット、融通性に富み、51,000m3 までの穀物または1,850TEUのコンテナの積載が可能である。南米やヨーロッパの船主から受注を得ている。

・45,000DWT型プロダクト/ケミカル・タンカー:南米、オーストラリア、ニュージーランド船主向けに建造。船体は高張力鋼の使用量が10%未満で、軽度の氷海強化が施されている。

 

 

 

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