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2. ポーランド造船業に影響を及ぼす諸要因

 

過去10年間に、様々な出来事がポーランド造船業に影響を及ぼした。世界造船業の一般的趨勢以外に、1980年代末に共産党支配から脱却して以来のポーランド独自の経済的、政治的要因も影響している。添付資料Aにそれらを時間的に順を追って列挙した。

 

2.1 全世界における新造船能力と需要の変化

1990年代の韓国における建造能力の大幅拡大は、西欧と同様、ポーランドの新造船ヤードにも明らかな影響を及ぼした。90年代半ばまでにはポーランドの各造船所はタンカー建造から事実上撤退し、高付加価値船に集中するようになった。90年代には年を経るに従い、ポーランド造船業の総竣工量は著しい回復を示したが、手持工事ではコンテナ船が大多数を占め、残りを冷蔵船、RO/RO船、漁船などが分け合っている。バルク貨物輸送用の船舶の受注は90年代末近くに至って漸く復活したが、それもケミカル・タンカーやオープン・ハッチ式撒積船など、比較的特殊な船種に集中している。

 

世界的な新造船建造能力の拡大に伴なう競争激化以外にも、ポーランドの造船所は過去10年間、以下のような要因による悪影響を被っている。

 

・90年代前半には冷蔵船市場が落ち込み、それに伴って冷蔵船の新造需要も減少した。それまではグディニア造船所がDole Fresh FruitやSafmarineなどからの受注で多数の冷蔵船を建造していた。

・ソ連の解体、コメコンの崩壊、東欧を襲った深刻な経済停滞により、東欧圏の固定顧客からの受注が失われた。

 

上記のうち第二点目が、90年代初期にポーランドの各造船所に多額の累積赤字を負わせる一つの要因となった。旧ソ連圏の船主数社が倒産し、ポーランドに発注していた新造船の代金を完済できなくなったためである。

 

この苦境を一部埋め合せたのが、1980年代以来のユニット化輸送の大幅拡大を背景とした、過去10年間のコンテナ船の大量発注である。コンテナ新造船需要の好調、特にドイツ船主からの需要拡大は、ポーランド造船業にとって大きなプラスとなった。

 

 

 

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