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MARITECHによる設計開発プロジェクトとタイトルXI融資保証による支援が鍵となり、ニューポート・ニューズ造船は1994年10月以降に46,500DWTダブルハル・プロダクトタンカー(ダブルイーグル)9隻の建造契約を受注することに成功した。受注船価総計は3億9,800万ドルとされている。

 

しかしながら、当該プロダクトタンカーの建造に伴い巨額の赤字を出したことから、1998年3月にニューポート・ニューズ造船は、受注した9隻のうち3隻をキャンセルし、最終船引渡し後に商船建造事業から撤退することを発表した。このような結果に終わったことについてはさまざまな原因が示唆されているが、業界筋によれは、その最大の原因は既存の艦艇建造施設を商船建造工事に利用できなかったために、設備投資等のコストが膨らんだことにあるとされている。

ニューポート・ニューズ造船はダブルイーグル最終船を1999年6月に引渡し、商船建造事業から撤退した。専門家筋によれば、同社が近い将来に商船建造契約獲得を図ることはないと見られている。

 

3-3 今後の展望

 

米国造船産業においては、買収・合併による集約統合が急激に進み、船舶造修売上高の9割以上を5つの企業で占めるまでに至った。造船企業間のチームアップや事業提携の究極の形がM&Aであると考えることができることから、今後新たに米国造船企業間においてチームアップや事業提携のニーズが発生する余地は極めて少ないものと考えられ、MARITECHの後継プログラムであるMARITECH ASEに基づく共同研究開発程度に留まるものと考えられる。むしろ、3-1(2)に記したような造船企業とエンジニアリング会社等の間の事業提携やチームアップの方が可能性として高いものと考えられる。

また、国際商船市場における現在の船価水準や米国造船業の競争力の実態を考えると、ニューポート・ニューズ造船の商船市場からの撤退に代表されるように、米国造船産業にとっての商船市場参入の魅力は以前に比べて薄れてきていると考えられる。最近における設計・生産技術の開発における米国の造船企業と外国造船企業との提携の大部分が、米国企業による商船建造契約受注獲得の努力の一環であったことを考えると、今後、外国造船企業との提携の余地も減少するものと考えられる。

 

 

 

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