インガルス造船が本建造契約を受注できた主な要因は2つある。
ひとつは、米国籍航洋クルーズ船腹の活性化を目的として1997年に成立した米国籍クルーズ船パイロットプロジェクト法である。同法に基づき、米国造船所と2隻以上のクルーズ船の建造契約を締結した米国企業に対しては、当該クルーズ船が建造されている間に米国内で市場を開拓し収入を得られるように、旅客船サービス法による米国建造要件を一時的に免除し、外国建造船を米国籍に転籍することが認められる。
もうひとつは、MARITECHによるフィンヤーズとの共同設計開発プロジェクトの成果である。ただしインガルス造船は、クルーズ船建造の受注にあたって、フィンヤーズとの契約を破棄し、クバナ・マサ造船所(フィンランド)と技術協力契約を結んでいる。同契約においては、クバナ・マサ造船所はインガルスに造船に対して最新の大型クルーズ船の設計・計画及び商船建造技術に関する専門的なアドバイスを提供することとなっている。
(2) ニューポート・ニューズ造船によるプロダクトタンカーの受注建造
1994会計年度のMARITECHプロジェクトとして、ニューポート・ニューズ造船が主契約者となり、国際市場向けの46,000DWTダブルハル・プロダクトタンカーの詳細設計を行った。プロジェクトのフェーズ1では、シリーズ船建造受注のために必要な契約前設計に焦点が置かれ、フェーズ2では定められた納期でコスト効率の高い建造を行えるような詳細設計の開発及び製造工程における改善点の洗い出しに焦点が置かれた。
ニューポート・ニューズ造船は1970年代にVLCCやLNG船を建造した実績があるが、最近におけるプロダクトタンカーの建造実績はないため、研究開発プロジェクトの実施にあたって石川島播磨重工業(日本)、MAN/B&Wディーゼル(ドイツ)、ABS等8社の協力を得ている。研究開発費は総額で1,240万ドルであった。