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また事業分野の点においても、ニューポート・ニューズ造船が空母及び潜水艦を事業の中心とし、水上戦闘艦の建造能力も有するのに対して、アボンデール・インダストリーズは海上輸送艦、揚陸作戦艦艇及び商船を事業の中心としており、相互に補完可能な事業運営となっている。米国海軍の基本戦略が同時多発する局地戦争への対処を想定したものに変わり、今後海上輸送艦や揚陸作戦艦艇の重要性が増すことが予想されることから、これらの建造を現在手がけているアボンデール・インダストリーズを傘下に入れることは、理にかなった企業戦略と言えよう。また本合併は、NASSCOを傘下に入れることによりこのような事業分野にも裾野を広げたジェネラル・ダイナミクスに対抗する意味もある。

本合併発表の際に最も強調されたのは造船所の地理的分散の点である。1997年11月のコンチネンタル・マリタイム・インダストリーズ(カリフォルニア州サンディエゴ)の買収により、ニューポート・ニューズ造船は西海岸における拠点を確保しており、アボンデール・インダストリーズの合併により、東西海岸及びメキシコ湾岸のすべてをカバーできることになる。これにより、海軍艦艇に対するライフサイクルサービスの提供体制は、少なくとも施設の配置の点においてはジェネラル・ダイナミクスを上回ることになる。

 

(ジェネラル・ダイナミクスによる反撃)

ニューポート・ニューズ造船とアボンデール・インダストリーズの合併は、その発表の時点で、実質的には双方株主の承認を残すのみの状態であり、両社の目論見では1999年の第2四半期にはすべての手続きを終えて正式合併の予定であった。ところが、この合併発表を契機としてその後思わぬ展開となった。

合併発表の1ヶ月後の1999年2月19日に、ジェネラル・ダイナミクスがライバル社であるニューポート・ニューズ造船に対して突然の買収提案を申し入れた。買収条件は、ニューポート・ニューズ造船の発行済株式を1株当たり38.50ドルの現金で購入するというもので、買収額は13億5,000万ドルにも及ぶ。

両社は潜水艦建造を巡って長年にわたって激しい競争を繰り広げており、双方の経営陣の関係は必ずしも友好的とは言えない。ニューポート・ニューズ造船とアボンデール・インダストリーズの合併合意直後の買収申し出であったことも考え合わせると、両社の合併により強力な競争相手が出現することをおそれたジェネラル・ダイナミクスが、これを妨害するために取った行動であるというのが業界筋の大方の見方であった。

 

 

 

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