手持工事量を考えれば、少なくとも現在の建造修繕部門の現場要員を支えられるだけの工事量はあるはずである。
一方のNASSCOは、従来まで従業員の持株会社であったため、経営上の裁量に制約があり、設備投資等も低く抑えられていたが、ジェネラル・ダイナミクスの傘下に入ることにより財政基盤が強化され、設備投資や技術開発のための資金投資が容易になる。また、議会に対する政治的影響力が高まり、海軍艦艇建造・改造予算の確保が容易になるメリットもあるものとNASSCO関係者は見ている。
なお、NASSCOは買収前に、アラスカ航路向けタンカー建造の交渉をBPと行うほか、クルーズ船、オフショア向けシャトルタンカー、自動車運搬船の建造事業への参入も検討していたが、今回の買収の結果、これら商船建造市場への本格参入の可能性が減ったと見る向きがある。これは現在のジェネラル・ダイミクスが基本的には国防市場以外には関心が薄く、事実、1995年にバス・アイアン・ワークスを買収した際にも商船建造に関連した事業部門や設備投資計画をすべて切り捨てているためである。
しかしながらNASSCOは、買収後に2件の大型商船建造契約を受注又は合意に達している。1999年6月には、40ノットの高速コンテナ船FastShip 4隻の建造について、FastShip社(ペンシルベニア州フィラデルフィア)と合意に達している(FastShipの概要については以下の図表を参照のこと)。船価は1隻当たり約2億2,000万ドルと見積もられている。また、1999年12月には、Totem Ocean Trailer Express(TOTE)(アラスカ州アンカレッジ)からタコマーアンカレッジ間のジョーンズ・アクト航路向け大型RORO船(全長839フィート)2隻の建造を3億ドルで受注した。
TOTE向けのRORO船はNASSCOが最近てがけてきた海上輸送船の延長であり、FastShip向けの高速船は現在のところ正式な契約には至っていない。したがってNASSCOが商船市場への再参入を本格的に図ろうとしているのか、あくまで国防契約中心でその延長にある商船建造契約以外には手を広げるつもりがないのか、現時点で判断するには早計であると考えられる。