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各会計年度に負債として計上されたグッドウィルは、M&A後の企業の利益を圧縮することになる。プーリング方式の採用により買収する側の企業は、M&A取引から発生するグッドウィルの計上を避けることができる。

なお、最近における過熱気味のM&A活動をスローダウンさせるために、財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board)2は1999年4月にプーリング方式の廃止を決定し、グッドウィルの全額計上を義務づける購入方式(Purchasing accounting)を採用した。

 

上記に挙げた要因のほかに、個別のM&A取引きにおいては各種の要因が存在する。テクノロジーと市場の変化により発生したキャパシティ余剰が、競合企業の合併をもたらす主因となることもある。スケール・メリットの確保、アクセスできる市場の幅やプロダクトベースの拡大、財政体力の強化等がM&Aの動因となる場合もある。また、中間製品のサプライヤーや配給業者を買収することにより、サプライ網の縦のコントロールを獲得することが主な動因となるケースもある。さらに、同族企業に関連した小規模なM&Aにおいては、相続税に関する問題が動因になることもある。

 

1-5 M&Aに関する政府の関与

 

M&Aがもたらすマイナス面の最も明らかなものが、当該分野における競争が減ることである。このような観点から、1500万ドルを超える合併については、1976年Hart Scott Rodino法に基づく政府による審査が義務づけられており、司法省又は連邦取引委員会(FTC)が合併を却下し又は取引条件を修正させる権限を有している。

 

1 ブランド、定評、従業員の士気等、競争上有利となるような無形資産のことをいう。

2 金融市場取引の記録、報告、プレゼンテーション用ガイドラインを提供する業界組織。

 

 

 

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