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5.6 リース・ファイナンス-投資及び使用者の規準

投資家にとって、海運タックス・リースが魅力あるものとなるためには(すなわち、課税されるべき収益を有する法人貸出人が、税金控除出来る資本引当金によって課税上保護されること)、以下の点を確実なものとしなければならない。

a)借入人(すなわち資産の使用人)による返済不履行の危険が全くないこと

b)貸出人が海運業のリスクをまともに受けないこと

c)借入人が税金控除の適格性を全て受け入れ、変更されるタックス・リスクを全て負うこと

返済リスクや海運リスクに関連した補償は、通常、借入人が格付け機関によって高く格付けられていれば、満足することができる。しかし、こうしたことは希である。他の代替措置としては、現金担保(リース支払いに実際にあてられる)や銀行保証による信用強化がある。「リースは100%のファイナンスを提供するものである」というよく誤解される概念は、資金提供の観点からのみ真実である。借入人のバランス・シート(または現金)がリース取引を実際に後押ししているか、銀行が通常の優先弁済条件で信用強化を行っている。

貸出人は、船舶運航に関する公害や安全リスクに巻き込まれる可能性がある。このため、このリスクを最小限に留め、借入人がこの様なリスクを貸出人に補償でき、また、しなければならないことを確実なものにする詳細で複雑な書類や仕組が必要である。

タックス・リスク補償とは、取引期間中(通常10〜15年)に貸出人が受ける課税控除の条件を確実なものにすることである。もし、税金に変更が生じた場合、タックス・リースが成り立たなくなり、課税収益が生じたり、引当金の早期取り崩しを招くことになるかも知れない。このようなコストは、借入人が負担するようにしておく必要があり、それによって、コストを被りながらも元来のリースの恩恵を回復するのである。

税金投資家は通常、幅広い節税措置取引の選択の幅を有しているので、その節税枠提供の見返りとして、上記のような事項を完全に満足する様に要求できるのである。

 

5.7 リース・ファイナンス-EME海運への提供者

最近まで、この種の資本は、柔軟性がなく、複雑で、法的コストも高く、高い信用が必要であるため、海運業はこういった資本を利用することを思いとどまっていた。一定の課税管轄地域がより魅力のあるものになり、控除もより価値のあるものになってくるに従い、タックス・リース構造はより魅力を増してきており、その結果、量的に成長してきている。とはいえ、ほとんどが、クルーズか定期船タイプの船舶とその使用会社に限られている。

タックス・リースの提供者の典型的な例は、課税保護すべき利益を有しているものの独自の資本引当金額が余り高くない銀行等の金融機関である。節税措置を有する銀行は、海運業と密接な結びつきを有する銀行と異なる場合が多い。従って商業海運銀行は、タックス・リースの手配をする役に回り、必要な信用強化を行っている。報告されている海運リース取引のリストを表5.Dに示す。

 

 

 

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