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ハイイールド債発行は、利息クーポンは高くないが、通常かなりの割引がある。債券は、通常10年後に一括して払い戻されるため、毎年の元本返済を賄うためのキャッシュフローの必要性は少なくなる。1997/98年に行われた海運会社発行のハイイールド債のほとんどは高い財政レバレッジがあり、債券ファイナンスは実質的には、株式発行に代わるものであった。その結果として、現在の弱い海運市場においては、多くの発行人が厳しい財政的緊張をしいられている。過去18カ月の間に市場でハイイールド債を発行した30社のうち、12社が少なくとも1回は格付け機関から等級を落とされている。こういった会社の中には、発行からたった12〜24カ月以内の間に債務不履行になったり、それに近い状況になっているものもあると報告されている。

 

1.10 EMEにおける公開株式ファイナンス

EMEの上場企業の市場資本評価額は、1998年末で、およそ230億ドルであった。A.P. Moller、P&O、Hapag Lloyd及びSig Bergesenの4つの上場企業が、このうちの50%を占めている。公開株式ファイナンス調達のための規準は、概略以下のとおりである。

* 収益の面での確かな実績

* 充実した企業構成

* 強固なバランスシート

* 発展のための潜在能力

* 市場での名声や有利性

これらの規準は、初期公募(“IPO”)に適用されるが、同じ規準が第2次発行にも当てはまるであろう。海運業は、一般に、公開株式投資者の要求に見合うだけの持続した配当を、投入した資本から生み出すことができないでいる。多くの上場企業のインサイダー管理によって、株式取引量は減少し、アナリストの関心を低める結果となり、結果として投資家へのアピールも低くなっている。こういった事実のために、海運会社にとって、欧米の株式市場はアクセスが限られる結果となってしまった。例外として、クルーズのような特殊な海運事業がある。主要なIPOの件数は、ここ5年間で12件であるが、調達金額は14億ドルにすぎない。第2次発行で、更に32億ドル調達したと推定される。公開株式発行のおよそ25%は、クルーズ部門関連である(11億ドル)。海運会社の統合が進み、株式市場の企業及び利回り規準を満足するものになれば、公開株式はより重要な資本源になりうるが、現在のところ、EME内の海運業への重要な新しい資本提供源とはなっていない。

 

1.11 EMEにおける個人投資ファイナンス

個人投資は、1998年末で160億ドルと推算される。個人投資の価値は、船腹の資産評価額から他の資本要素を差し引くことにより、計算される。個人投資家は、通常企業の所有者や経営陣か、過去の同族会社の相続人である。海運業への第三者による個人投資は、非常に限りがあると考えられている。個人の投資家は海運業には高いリスクがつきものとみなし、気まぐれで周期的な利回りがこのビジネスの特徴であると考えている。主要個人投資家の多くは、経営支配権を保持しながらも、会社を上場企業としている。

 

 

 

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