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2] 動作

マクロ操作によって与えられた制御力は、分配機構によって、個々のタグボートの推力に分配される。この機能により、操船者は、個々のタグボートの動きやコマンドに神経を使うことなく、状況把握とマクロ操作に専念することができる。つまり、操船作業の負担が大幅に軽減され、正確な判断を下すことが容易になると期待できる。

(2) 制御方式

シミュレータによる評価には、次の2種類の制御方式を適用できる。

1] 直接制御

制御力を船体に直接加えることによって、船体運動を制御する。

この方式は、シミュレータにのみ適用可能であるが、最も単純な方式であり、操船者の意図を正確に反映した操船が可能である。つまり、最も無駄のない制御を実現し、性能の上限を示すものとなるので、次の分配制御を実現する際の目標となる。

2] 分配制御

分配機構の出力を、個々のタグボートに与えて船体運動を制御する方式であり、シミュレータと実船のいずれにも適用できる。

分配機構の出力がマクロ操作の入力を完全に分配できれば、直接制御と同様に、操船者の意図を正確に反映した操船が可能になる。逆に、分配が不完全ならば、操船者の意図との間に相違が生じる。

(3) 実船運用の検討

本システムを実船で運用する際に、機器類を本船上に設置する必要があるが、恒久的な設置が可能とは限らないので、入出港時に搬入することを前提とする。

また、本船側のセンサ(ジャイロ、ログ、風向風速計など)は、信号を入力するには機器間の接続を要するだけでなく、信号形態もマチマチであるため、利用が難しい。

従って、これらのセンサと接続せずに使えるシステムとするために、2台のKGPSを用いて、位置・速力だけでなく、船首方位も検出することにした。

(4) システムの構成

図6にシステムの構成および実行環境との関係を示す。

1] ソフトウェア

ユーザ・インタフェイス:表示部と操作部

プロダクション・ルール:各種のパターンをルール化したもの。

分配機構:ルールを用いて、操作部からの入力に従って、タグボートの推力を算出する。

拡張機能:フィールドバック制御とフィードフォワード制御の追加を計画している。

2] ハードウェア

実船に適用されるシステムには、以下の機器が合まれる。

・タグボートとの通信手段:無線LANを用いて、コマンドを伝達する。

・自船状態の測定手段:2台のKGPSにより、位置・速力・方位を検出する。

また、外乱(風向風速や潮流)は、陸上に設置したセンサで測定し、そのデータを、無線LANを用いて、本船に転送することを計画している。

 

 

 

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