2.4 シール材料の改良
舵取機用シール材料としての特に強い要求性能およびその指標となる物性は下記のとおりである。
a) 耐摩耗性(長寿命)
・硬度が高い
・硬さ変化率が少ない
b) 耐油性(長寿命)
・体積変化率がマイナスでななく、僅かにプラス程度
・引張強さ変化率が小さい
c) 弾力性の維持
・弾性率が高い
・永久歪残存率が低い
・長手方向の座屈開始応力高、圧縮時の局部膨れ出しが少ない
d) 耐破損性(穏やかな劣化)
・引張強さが高い
・低速摺動時の耐焼きつき性良好、炭化温度高
・引き裂き強さ大
・隙間はみ出し量が小
e) 入手の容易性(大型特注成型品)
・材料コスト低
・成型法が簡単、迅速
・製造ロットによるムラが少ない
上記は相反する要素もあるが、それぞれを実用上満足する範囲に来る物質として再検討し、分析、テストを行い、今回選定しなおした。
2.5 洋上開放の実現
ロータリーベーン式舵取機の内部シールの大部分は、舵取機の上部カバーを開放するだけで交換できる。
しかし下部リングシールは従来入渠した時に舵を船外から支えておいて、舵取機のロータをラダーストックから抜出して交換していたが、プロペラメンテナンスエ事や船尾塗装工事と併行工事となり、工程的に中断が多かった。
今回のシール開発により、更にシール品質の安定化と長寿命化が達成できる。今回さらに、入渠インターバルの長期化に伴う保守機会の減少に対応して、信頼感をより増加させ、かつ万一のトラブル時に大型船舶の舵開放費用の低減と早期修理を実現する為に、洋上ロータ開放用クランプ装置を開発した。
洋上開放装置が具備すべき要件は次のとおりとして開発を行った。
1] 舵取機のロータから切離された舵板および舵軸の全重量を、安心感を与えるような方法で支持すること。
2] 船外の波や潮等による舵板への外乱回転力及び重心の偏在による回転力を確実に固縛して、不意の舵軸の旋回による事故を安心感を与えるような方法で防止する。
3] ロータから抜出された舵軸は圧入量に相当した数mmから数10mm下降するが、これを途中で引っかからないように、かつショック無く受けとめ、再装着時には舵軸の油圧ジャッキのみで上昇させうる位置に維持できること。
4] 舵取機据付台の中に搬入出したり、狭い舵取機台のメンテナンス穴から装着、取り外しができること。